若竹七海『依頼人は死んだ』

依頼人は死んだ (文春文庫)

先日、といってもずいぶんだってしまったが、NHKでドラマ化された葉村晶シリーズの原作を読んでみることにした。本書はそのなかで最初に刊行された作品集。9編からなる連作短編という形をとっている。

ドラマでは、シシド・カフカさんが演じる女探偵葉村晶のクールでタフでハードボイルドな感じと、ちょっとマジカルな物語に惹かれたのだけど、それは原作にもとからあるものだった。ドラマで採用されているストーリーは9編中3編あった。結末や細部はそれなりに改編されているけど。人物像や物語の語り口はそのままだった。

どの作品も構成がすばらしい。語り手が葉村晶以外の人物だったりとか、時間がずらされていたりとか、非常に巧みなのだ。そのくせ読みやすくて、なんのひっかかりもなく読み進められる。

書かれた時期波90年代後半なので、そのときの社会状況や人々の生活が書き込まれている。そうして提示されると、現在とかなりちがっていて今さらながら驚く。葉村晶をはじめとしてタバコを吸う人が多い。不況のまっただ中だったが、悲壮感はまったくなくて今より希望があった。まさかそれが30年続いて失われた何十年という形で語られるようになるとは誰も思っていなかった。そして、まだ古い時代の価値観が人々の心に色濃く残っている。男女平等なんてどこ吹く風だし、こどもをつくることが義務だったし自明視されていた。

ドラマでこのシリーズにめぐりあえてラッキーだった。継続して読んでいこう。