ケン・リュウ編(大森望、中原尚哉、他訳)『月の光 - 現代中国SFアンソロジー』

『折りたたみ北京』に続いてケン・リュウ編による中国SF短編集。今回は14人の作家による16編の作品が収録されている。 以下に作者と収録作のリストを掲げる(『折りたたみ北京』にも収録されている作家には※をつけた)。 夏笳(※)『おやすみなさい、メランコリー』- 鬱病の人の心のケアをするた...

『チェコSF短編小説集』(ヤロスラフ・オルシャJr編、平野清編訳)

20世紀初めから終わりまでのチェコのSF短編小説を集めた本。収録作は11篇。ロボットという呼称を生み出した巨匠チャペックの作品も含まれているが、そのほかは初めてきく名前だ。編集の都合だろうか、数ページ程度の掌編といったような作品も少なからずあるので、チェコのSFの概況を把握するに...

ケン・リュウ編(中原尚哉・他訳)『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』

中国系アメリカ人SF作家のケン・リュウが現代中国のSF作家7人の作品12編(とエッセイ3編)を選んで英語に訳したアンソロジー。本書はそれをさらに日本語に訳した重訳だ。そのほか、ケン・リュウによる序文と各作家の紹介がおさめられている。 率直にいって、どれもおもしろい。それも中国ならで...

鼓直編『ラテンアメリカ怪談集』

収録作は以下の通り。過半数がアルゼンチンの作家の作品だ。 ルゴネス(田尻陽一訳)『火の雨』 - ARG キローガ(田尻陽一訳)『彼方で』 - GTM ボルヘス(鼓直訳)『円環の廃墟』 - ARG アストゥリアス(鈴木恵子訳)『リダ・サルの鏡』 - GTM オカンポ(鈴木恵子訳)『ポルフィリア・ベルナルの日記』 - ARG ムヒカ=...

岸本佐知子編『変愛小説集 日本作家編』

文庫化されてた。でも、久々に電子版を買って読む。 変愛小説集も3冊目。これまでは海外小説の翻訳だったが、今回は日本作家の作品だ。既存の作品から選んだのではなく、編者の岸本佐知子さんが作家に依頼し、書き下ろしてもらうというおもしろい成り立ちだ。 作家の名前を列挙すると、川上弘美、多和田...

Future Visions: Original Science Fiction Inspired by Microsoft

Microsoftが著名なSF作家を研究所に招いて最新のテクノロジーを見学してもらい、それから着想を得て書かれた作品を一冊にまとめたアンソロジー。電子書籍で無料で配布されている。収録されているのは9編(うち1編はグラフィックノヴェル)。 The Hobbitを読み終えた余勢を駆って古臭い...

F・ブラウン、S・ジャクソン他(中村融編)『街角の書店 18の奇妙な物語』

英語圏のまったく無名の作家からノーベル賞作家まで幅広く、いわゆる「奇妙な味」の作品ばかり18編を集めたアンソロジー。「奇妙な味」と自称する本は数多く出されてきたが、本書の味付けは格別だ。 まず、“bad taste”(悪趣味) と言ったほうがいいような独自の味わ...

『厭な物語』、『もっと厭な物語』

バッドエンディングの読んでいやな気持ちになる短編小説ばかりを集めたアンソロジー。最初の『厭な物語』がけっこう人気だったようで、なんと続編の『もっと——』が出ていた。二冊まとめて読んでみた。 『厭な——』の方は海外作品のみだが、『もっと——』には日本の作品三編が含まれている。一応収録...

岸本佐知子編訳『変愛小説集』

「変」というか奇形的といったほうがいいような愛の形を描いた英語圏の短編を集めた短編集。IIを先に読んでおもしろかったので前巻も読まなくては思っているところで文庫化された。 収録作。 一本の木に偏執的な愛情を抱いてしまった人自身の物語であり、かつパートナーが一本の木に偏執的な愛を抱いて...

西崎憲編訳『怪奇小説日和: 黄金時代傑作選』

まず「怪奇小説」という言葉について説明が必要だろう。 「怪奇小説」は英語でいうと “ghost story”。小説のジャンルを指し示す言葉で年代的にゴシック・ロマンスとモダンホラーの間にくるものらしい。ghost といっても日本でいう幽霊すなわち死者の霊的な存在が出てくるとは限らず、定...

村上春樹編訳『恋しくて - TEN SELECTED LOVE STORIES』

村上春樹の編訳による10の愛に関する短篇集。あまり名前をきいたことのない作家たちの作品を村上春樹が選んで訳した。ひとつは村上春樹自信の作品だ。前半はストレートなラブストーリーで、こういう奇をてらわないシンプルな作品も味わいがあってたまにはいいなと思っているところへ、後半はひねった...

西崎憲編訳『短編小説日和 英国異色傑作選』

英国の小説家20人の短編小説を一編ずつ集めたアンソロジー。掲載順に名前と生没年を列挙すると、ミュリエル・スパーク(1918-2006)、マーティン・アームストロング(1882-1974)、W.F.ハーヴィー(1885-1937)、キャサリン・マンスフィールド(1888-1923)...

岸本佐知子編訳『居心地の悪い部屋』

「読み終わったあと見知らぬ場所に放り出されて途方に暮れるような、何だか落ちつかない、居心地の悪い気分にさせられるような、そんな小説」ばかり1ダース集めたアンソロジー。確かに居心地は悪いけど、読み心地は絶品で、すらすらとページをめくり、あっという間に読み終えてしまった。 友達の部屋で...

岸本佐知子編訳『変愛小説集II』

「恋愛」じゃなく「変愛」。編訳者によるあとがきから引用すると「愛にまつわる物語でありながら、普通の恋愛小説の基準からはみ出した、グロテスクだったり極端だったり変てこだったりする小説」を集めたアンソロジーの2集目。最初は当然のように1集目から読もうと思っていたが、たまたま本屋に置い...

村上春樹編訳『バースデイ・ストーリーズ』

アメリカを中心とした英語圏の作家の、誕生日に関する短編小説を集めたアンソロジー。すべて村上春樹が訳している。 今この時期に誕生日に関する本を読むことはぼくにとってとてもタイムリーなことなのだ。この本には子供から老人までさまざまな年齢の人物の誕生日が描かれているが、年齢が高くなればな...