イタロ・カルヴィーノ(米川良夫訳)『見えない都市』

見えない都市

マルコ・ポーロの口を借りて語られる55の架空の都市の物語。どの都市もあるはずのない特異な謎をもっているが、どこか似通っていて交換可能であり、(少なくとも物語の中では)実在するかもしれない都市というより都市という記号について語っているように思える。都市の物語の間にときおりはさまれる対話に登場する語り手のマルコと聞き手のフビライも記号の織りなす広大な砂漠の中で途方にくれているようだ。

でも、それらは単なる荒唐無稽で空疎な物語ではなく、文明批評になっているものもあれば、人間の認識に関わる根源的な洞察を含むものもある。

これらの都市の中で一番好きなのはライッサだ。

陰鬱なライッサにおいても、やはり目に見えぬ一本の糸が走っており、それは生あるものの一から他へと一瞬のうちに結びあわせては解け、さらになお動いている点と点の間に張り渡されて新しい刹那の図形を描き出し、こうして一瞬ごとに不幸な都市はそのなかに、みずからの存在することさえも知らぬ幸福な都市を包含するものとなるのだ。

<th>
  都市名
</th>

<th>
  特徴
</th>
<td>
  ディオミーラ
</td>

<td>
  記憶に対する羨望が呼び起こされる都市
</td>
<td>
  イシドーラ
</td>

<td>
  欲望が思い出となる都市
</td>
<td>
  ドロテーア
</td>

<td>
  たくさんの道が開かれている都市
</td>
<td>
  ザイラ
</td>

<td>
  過去が空間となって広がる都市
</td>
<td>
  アナスタジア
</td>

<td>
  欲望の奴隷となる都市
</td>
<td>
  タマラ
</td>

<td>
  記号に覆われた都市
</td>
<td>
  ツォーラ
</td>

<td>
  暗唱されるための都市
</td>
<td>
  デスピーナ
</td>

<td>
  二つの砂漠の境界の都市
</td>
<td>
  ジルマ
</td>

<td>
  記憶が膨張する都市
</td>
<td>
  イザウラ
</td>

<td>
  地底湖の上の二つの宗教を信仰する都市
</td>
<td>
  マウリリア
</td>

<td>
  ひなびていた過去を賞賛する都市
</td>
<td>
  フェドーラ
</td>

<td>
  無数のガラス玉の中に雛形をもつ都市
</td>
<td>
  ゾエ
</td>

<td>
  各所の見分けがつかない都市
</td>
<td>
  ゼノビア
</td>

<td>
  高い柱の上にそそりたつ都市
</td>
<td>
  エウフェミア
</td>

<td>
  思い出を交換する都市
</td>
<td>
  ツォベイデ
</td>

<td>
  ぐるぐる巻きの街路の都市
</td>
<td>
  イパツィア
</td>

<td>
  記号ではなくその指し示すものが異なる都市
</td>
<td>
  アルミッラ
</td>

<td>
  水道管都市
</td>
<td>
  クローエ
</td>

<td>
  視線のみがからみあう都市
</td>
<td>
  ヴァルドラーダ
</td>

<td>
  湖水の上下の二重都市
</td>
<td>
  オリヴィア
</td>

<td>
  都市とそれを描く言葉の関係
</td>
<td>
  ソフローニア
</td>

<td>
  ペアを取り替える二つの半都市
</td>
<td>
  エウトロピア
</td>

<td>
  引っ越しをする都市
</td>
<td>
  ゼムルーデ
</td>

<td>
  上向きと下向き二つの顔をもつ都市
</td>
<td>
  アグラウラ
</td>

<td>
  名前の上に育つ都市
</td>
<td>
  オッタヴィア
</td>

<td>
  蜘蛛の巣都市
</td>
<td>
  エルシリア
</td>

<td>
  色とりどりの糸で結ばれた都市
</td>
<td>
  バウチ
</td>

<td>
  細長い竹馬の上の都市
</td>
<td>
  レアンドラ
</td>

<td>
  家につく神々と人につく神々の都市
</td>
<td>
  メラーニア
</td>

<td>
  演劇都市
</td>
<td>
  エメラルディーナ
</td>

<td>
  無数の経路が織りなす水都
</td>
<td>
  フィリデ
</td>

<td>
  視線をのがれる都市
</td>
<td>
  ピッラ
</td>

<td>
  都市と固有名
</td>
<td>
  アデルマ
</td>

<td>
  死者と出会う都市
</td>
<td>
  エウドッシア
</td>

<td>
  絵図面の中の都市
</td>
<td>
  モリアーナ
</td>

<td>
  両面都市
</td>
<td>
  クラリーチェ
</td>

<td>
  盛衰をくりかえす都市
</td>
<td>
  エウサピア
</td>

<td>
  生者と死者の二重都市
</td>
<td>
  ベルサベア
</td>

<td>
  天上、地上、地下の三重都市
</td>
<td>
  レオーニア
</td>

<td>
  ゴミにかこまれた都市
</td>
<td>
  イレーネ
</td>

<td>
  高原から望む都市
</td>
<td>
  アルジア
</td>

<td>
  土の中の都市
</td>
<td>
  テクラ
</td>

<td>
  永遠に工事中の都市
</td>
<td>
  トルーデ
</td>

<td>
  飛行場で名前を変えるだけの都市
</td>
<td>
  オリンダ
</td>

<td>
  新しい街が中心から徐々に拡がる都市
</td>
<td>
  ラウドミア
</td>

<td>
  生者と死者、これから生まれる者の三重都市
</td>
<td>
  ペリンツィア
</td>

<td>
  占星術をもとにつくられた怪物都市
</td>
<td>
  プロコピア
</td>

<td>
  人が増殖する都市
</td>
<td>
  ライッサ
</td>

<td>
  不幸の中に幸福を包含する都市
</td>
<td>
  アンドリア
</td>

<td>
  天界と連動する都市
</td>
<td>
  チェチリア
</td>

<td>
  いたるところにある都市
</td>
<td>
  マロツィア
</td>

<td>
  鼠の都市と燕の都市
</td>
<td>
  ペンテシレア
</td>

<td>
  郊外ばかりの都市
</td>
<td>
  テオドーラ
</td>

<td>
  動物たちとの争いの都市
</td>
<td>
  ベレニーチェ
</td>

<td>
  正義と不正が交替する都市
</td>
見えない都市一覧
タイトル
都市と記憶1
都市と記憶2
都市と欲望1
都市と記憶3
都市と欲望2
都市と記号1
都市と記憶4
都市と欲望3
都市と記号2
精緻な都市1
都市と記憶5
都市と欲望4
都市と記号3
精緻な都市2
都市と交易1
都市と欲望5
都市と記号4
精緻な都市3
都市と交易2
都市と眼差1
都市と記号5
精緻な都市4
都市と交易3
都市と眼差2
都市と名前1
精緻な都市5
都市と交易4
都市と眼差3
都市と名前2
都市と死者1
都市と交易5
都市と眼差4
都市と名前3
都市と死者2
都市と空1
都市と眼差5
都市と名前4
都市と死者3
都市と空2
連続都市1
都市と名前5
都市と死者4
都市と空3
連続都市2
隠れた都市1
都市と死者5
都市と空4
連続都市3
隠れた都市2
都市と空5
連続都市4
隠れた都市3
連続都市5
隠れた都市4
隠れた都市5

★★★