レベッカ・ブラウン(柴田元幸訳)『体の贈り物』

体の贈り物

簡単にいうとHIV患者たちとホームケアワーカーである「私」のかかわりを描いた連作短編集だ。徒に感傷的になることなく、「私」のプロとしての作業の様子をときおりおきるとまどいを含めて丹念に描いている。その仕事の手際よさは逆に患者たちの弱々しさ、そして、いくらつくしてももうすぐ死んでしまうという運命を浮かび上がらせる。

各作品にはそれぞれ『~の贈り物』というタイトルがつけられている。「汗」、「充足」、「涙」、「肌」、「飢え」、「動き」、「死」、「言葉」、「姿」、「希望」、「悼み」。それらが果たして「贈り物」といえるのかどうかわからないが、とにかく贈る側と受け取る側がいるのは確かだ。生きるというのはある意味こういった「贈り物」の連鎖のことなのかもしれない。

へたり気味のときにはちょっとつらい本だが、でもそのなかに勇気を与えてくれる何かがあるのはわかる。今はまだはっきりと見えないけど。

★★