アガサ・クリスティー(中村能三訳)『カーテン ―ポアロ最後の事件―』

カーテン

誰もがおもしろいと思うように、ぼくもまたアガサ・クリスティーの作品は大好きなのだけど、手に取るのはほんとうに久しぶりだ。クリスティーの世界に耽溺している時期には、愛着をもっている探偵の最後の姿をみたくなかったが、もうすっかり遠ざかってしまった今だからこそ、読むことができる本だ。

ポアロ最初の事件の舞台スタイルズ荘を久々に訪れたポアロとヘースティングズだが、その逗留客の中に、まるで無関係ですでに解決済みとされている複数の事件をつなぐ真の犯人がいるという。新たな事件を防ぐため、身体が不自由なポアロに代わってかぎまわるヘースティングズだが……。

ミステリーなので、ねたばれなことは書かないが、身体は衰えても、頭脳は衰えないポアロ。最後の最後までかっこいい。

出版されたのはクリスティーの晩年だったが、書かれたのは1940年代初頭のあぶらののりきった時期だったそうだ。最後の事件をキープしたまま、ポアロはその後もいくつも難事件を解決したことになる。ぼくもいまのうちに最後の散歩をしておこうか。

★★★