小田中直樹『フランス7つの謎』

フランス7つの謎

ことあるごとに日本という国はどこか変だと思うぼくではあるが、もしフランスで暮らすことがあれば、激しいカルチャーショックに見舞われ、日本最高とつぶやくであろうことも、また間違いのないところだ。

本書は、身近に感じている割にとことん異質な国フランスについて、7つの理解しがたい点を挙げ、なぜそうなのかを、歴史的な経緯をたどることによって解き明かしている。同じ著者の『歴史学ってなんだ?』は歴史学がどう役立つかを説いた本だったけど、こちらはその応用編といえる。

扱われているテーマは、政教分離(イスラムのスカーフ問題)、多発するストライキ、地方分権、マクドナルド打ち壊し、反米主義、エリートと階級社会、植民地問題、と多岐にわたっている。それぞれの問題がフランスでどのように現れているかをみることにより、逆に日本のことがよくみえてくる。たとえば、フランスにおける政教分離は宗教が政治のことに口出ししないということに重点がおかれているのに、日本では逆に政治が宗教に口出ししないことが重視されている、ということがわかる。ただし、日本に関する言及は、読者への問いかけとして、軽く触れられるだけで、その点が少し物足りない。

★★