浅田彰『逃走論 スキゾ・キッズの冒険』

逃走論―スキゾ・キッズの冒険

単行本としては1984年に刊行された本(文庫化は1986年)なのだが、内容的にはまったく古さを感じさせない。ただ、その当時ポストモダンと呼ばれていた言説がもっていた勢いが今では失われているのは確かなことで、この本の中にある軽快さに、軽さこそがすべてだった80年代という時代とあわせて、ある種のやるせなさを感じてしまう。

収録されている柄谷行人、岩井克人との鼎談の中で、柄谷氏が『「実践」というのはヤケクソでムチャクチャな非方向的なもので、とにかくそういう線を引いているみるほかないということだと思う』という発言があるけど、「実践」はやはり失敗を余儀なくされているものなのかもしれない。残っているのは、「実践」をしないという立場のいわゆる現実主義で、いろいろシュリンクして息苦しい世の中だと、少し鬱になる。