ウィリアム・サローヤン(関汀子訳)『ディア・ベイビー』

ディア・ベイビー

一昔前の小説や映画といっても多種多様だが、そこに共通して感じるのはこの世界や人間に対する信頼だったりする。サローヤンのこの短編集は比較的シニカルな作品が集められているようなのだけど、それでもそのシニカルさは、どこかほかの場所にシニカルではないストレートなものが存在していて、それと対比してのシニカルさであるように感じられる。シニカルでなくては生きていけない現代という時代において、それは一種の甘さに映ってしまうのかもしれなくて、そのあたりがサローヤンが読まれなくなっている理由なのだろう。

★★