山折哲雄『近代日本人の宗教意識』

近代日本人の宗教意識 (岩波現代文庫―学術)

タイトル買いしたのだけど、読みたかったのとは対極的な本だった。まず前提となる現状認識がちがっていて、筆者は日本人がもともともっていた宗教心はすたれて無神論的な態度が主流になっていると考えているのに対し、ぼくは今でも宗教心は日本人の行動を陰ひなたで律していると感じている。それで、ぼくはその宗教心というものを分析的に明らかにしてほしかったのだけど、筆者はそういう分析的な態度を西洋の一神教由来のものだと切り捨てている。ついでに、ぼくが仏教を評価するのはその合理性なのだけど、筆者はその原始的なエネルギーや日本の風土との親和性をもちあげる。

アプローチは逆方向だが、内容としては、正岡子規、夏目漱石、寺田寅彦など日本近代の文化を築いてきた一見非宗教的な人たちの根底に流れている宗教心を明るみにだそうとしていて、(文章も比較的平易だし)それなりに興味深く読めたのだった。

ただ、そうやって内在的に宗教意識について語っていくのは、変なたとえかもしれないけど、すでに半径1m以内と証明されている円の中で、正確な半径を求めようとしているような行為に思えてしまう。それが98cmだろうが99cmだろうがあまり変わりはないように思えるのだ。ぼくはむしろ円の外側に興味がある。