阿部和重『シンセミア』

シンセミア〈1〉シンセミア〈2〉シンセミア〈3〉シンセミア〈4〉

読む前は神町は想像上の地名だと思っていたが、作者阿部和重の故郷であり、山形県東根市に実在するらしい。そこで2000年夏に起きたあまりにも凄惨で汚穢に満ちた数々の出来事を克明に綴った物語だ。もちろんすべて架空の出来事だが、リアルに細部を積み上げた構想力、想像力にはただただ感心するしかない。

登場人物の内面描写は欲望と打算ばかりで、視点がころころ変わるため、特定の登場人物に感情移入ができず、かえってその不安定さが、続きを読まなければというエネルギーを生んで、ほんとうに夢中になって一気に読んでしまったのだった。

同じように分厚いドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』と無理矢理つなげると、あちらでは、神の不在が人々の心を蝕んでゆく様をモラリスティックに描いたけど、こちらは神町という名前にもかかわらず、神は不在は既定事実で、人々は自分の欲望を神としてあがめ、他者の欲望という怪物に恐怖するしかない。彼らの醜いありさまを作者といっしょにながめるのは、いわば神の視点であり、読みながら彼らを罰したいというある意味モラリスティックな欲望を感じてしまった。その欲望がかなえられたカタルシスとともに4巻目の最後のページを閉じたのだった。