舞城王太郎『スクールアタック・シンドローム』

スクールアタック・シンドローム (新潮文庫 ま 29-3)

そろそろ現代日本の小説も飽きてきたなと思いつつ手に取った本書だけど、やっぱり舞城王太郎はおもしろい。

珍しく残虐描写のない『我が家のトトロ』のほかは、耳をかみ切って飲み込んだり、高校で生徒や教師が623人殺されたり、女子中学生が女子中学生の首の骨を一撃で折って殺したり、生き返ったり、という相変わらずの展開なのだけど、なぜかそこには不思議な穏やかさや希望のようなものがあるのだった。

特に書き下ろしの『ソマリア、サッチ・ア・スウィートハート』は、ソマリアという地理的にも心理的にも遠い国の名前を持つ女の子への友情を描いた作品で、それは愛情とは違って必ずしも相手に届くことは必要なくて、まさに希望のようなものなのだ。ヴォネガットの言葉を借りれば「愛は負けても親切は勝つ」。