アルフレッド・ベスター(渡辺佐智江訳)『ゴーレム100』

ゴーレム100 (未来の文学)

アルフレッド・ベスターの名前すら知らなかったSFファンとしてはだめだめなぼくがいうのもなんだが、SFというジャンルの本質はまだみたことのないものをみせてくれるところにあると思う。ところが本書は、そう思っていたぼくですら度肝(って何だ?)を抜かれるほど斬新だった。

さまざまな引用、言葉遊び、タイポグラフィ、イラスト、楽譜。1980年に出版された本だが、2007年の今でもまだ本書について語る言葉すら発明されていない感じだ。とりあえず本書に出てくる「ガフしゃべり」をマスターして、淫猥や悪趣味という言葉を最上級のほめ言葉にしておかなくてはいけない。そんな小説を書いた作者だけでなく、見事「自然な」日本語に訳した訳者にも拍手を送りたい。