速水健朗『ラーメンと愛国』

ラーメンと愛国 (講談社現代新書)

ニッチでマイナーな食べ物だった戦前の「南京そば」、「支那そば」がいかに国民食ともいわれるようになってきたかを、戦後日本の歴史と共にたどっていく。ラーメンそのものではなく、ラーメンと日本社会のかかわりに重点を置いた本だ。

第1章。戦後食糧難の時代、アメリカの余剰穀物の販売先とされた日本に、それまでなかった小麦食の文化が根付きはじめる。

第2章は大量生産のノウハウを学んでものづくり大国になろうとする日本と、その一例としての安藤百福のチキンラーメン。ちなみにラーメンという呼び名はこのチキンラーメンによって全国的に普及したそうだ。

第3章は高度成長どまんなか、のちに貧しかったけど幸福だった時代としてノスタルジーの対象となる昭和33年(1958年)。都会に出てきた単身者たちの安価な日常食を経ていよいよラーメンが国民食になっていく。しかし当時はラーメン屋は貧乏でかっこうわるいものとされていた。

第4章は、田中角栄の列島改造論と札幌、九州などご当地ラーメンの勃興。

第5章では、長引く不況の中、ラーメンが、中国伝来という装いを完全にはぎとられて、純和風な(というよりそれを擬した)スタイルになっていったかが語られる。店員がなぜか作務衣姿で、店内に相田みつを的なポエム(ラーメンポエム)が書かれている現在のラーメン屋のひとつの形は90年代にはじまったもの。大規模で単価が安いチェーン店ばかりがはやる外食産業だが、ラーメンだけは例外で、単価があがり、個人経営や新規参入の店が多いそうだ。

でも、やっぱりぼくはラーメンよりカレー派だ。