ジャネット・ウィンターソン(岸本佐知子訳)『オレンジだけが果物じゃない』

オレンジだけが果物じゃない (白水Uブックス176)

作者の半生をなぞったかのような自伝的小説。帯には半自伝的と書いてあったけど、自伝的成分は4分の3くらいはあるんじゃないか。

養女として預けられた父母。特に母親が、カルト的なキリスト教の分派を信仰していて、彼女も幼い頃から宗教的な教育を施され、説教師になることを嘱望されるが、女性でありながら女性と恋愛関係になってしまったことをきっかけに、信仰を捨て自分の道を歩き始める。というあらすじだけみると深刻な話のようだけど、一貫してユーモラスなタッチで描かれている。

自伝的物語の合間、合間に、完璧な女性を探す王子の物語や、妖術使いに弟子入りする女の子ウィネットの物語、幻の聖杯を探す騎士パルシファルの物語などが、唐突な感じで挿入される。でもそれは唐突でもなんでもなくて、彼女の物語をトランスフォームした同じ話を語っているのだ。たぶん、そうすることによってしか、彼女は自分の物語を語り通すことができないのだ。

ろころで、主人公の住むのは小さな村にもかかわらず、同性愛的傾向のある女性が何人も登場するのだけど(そのうち何人かと彼女は関係を結ぶ)、けっこうな比率で存在するものなのだろうか。ジャネット・ウィンターソンの写真をみるとボーイッシュで、確かに女性にもてそうなタイプだ。彼女の魅力がまわりの女性の潜在的な傾向を顕在化させたのかもしれない。