ケラリーノ・サンドロヴィッチ『消失/神様とその他の変種』

ケラリーノ・サンドロヴィッチ 消失/神様とその他の変種 (ハヤカワ演劇文庫)

1998年以降のナイロン100℃の本公演は再演をのぞいてすべてみているので、当然この二つの戯曲も初演時に舞台でみている。『消失』は2004年、『神様とその他の変種』は2009年。特に『消失』の方はすごい傑作だったという印象が強く残っていた。ところが、細部どころかあらすじすらまったく思い出せず、われながら何のために芝居をみにいっているのかとあきれていた折り、文庫で戯曲が出版されたことを知り、読んでみようと思ったのだ。

さすが一回みているだけあって、セリフとト書きを読んでいると、それぞれのシーンが鮮やかによみがえってきた。目の前で上演されているような気持ちでページをめくった。耳で聞いたのではあまり気がつかなかったが、活字で読むと、それぞれのセリフがとても計算されて書かれていることがわかる。巧みに笑いを誘いながら、それがそにお次のシーンでシリアスで重要な伏線としてきいてくるのだ。

最終戦争後の家族と罪を描いたシリアスな物語『消失』、シュールな笑いが前面にでた『神様とその他の変種』。どちらも素晴らしく、ナイロンの2つの側面を一冊で味わうことができたのだった。

★★★