北村薫『リセット』

リセット (新潮文庫)

『スキップ』、『ターン』に続く時と人の三部作の完結編。といっても三作の間にストーリーも登場人物もいかなる関連もない。不思議な時間の流れに翻弄される人たちというのだけが共通している。時間がいきなり『スキップ』したり『ターン』を繰り返したあと、本作での時間のいたずらは輪廻。いたずらというよりも、親切、いや途方もない恩寵だ。

ほのかな恋心を抱きあっていた幼い二人のうち男のほうが戦争の犠牲になってしまう。男はやがて生まれ変わり、十数年後、小学生と「おばさん」という立場で再会する。ところが今度は悲惨な事故が起こってしまい再び別れ別れになる。そしてまた十数年後ようやく…。

久々に読むウェルメイドな作品。ご都合主義という言葉もあるけど、それをいうのは野暮だろう。季節がめぐるように時がめぐるメルヘンに素直に感動すればいいのだと思う。戦前の流行や生活の様子が詳細に書き込まれていて、その部分もとても楽しめた。

★★