杉田昭栄『カラス なぜ遊ぶ』

カラス なぜ遊ぶ (集英社新書)

「ショックなこともあるけど、カラスをきらいになれない」というのがぼくがカラスに抱いている率直な気持ちだ。そんなカラスの行動の謎を脳と身体の研究成果から解き明かす本。

滑り台で遊ぶという話や、くるみを車道に落として車に割らせるという話があるように、カラスが頭がいいというのはほんとうのことで、量の多い、少ないもわかるし、あるカテゴリーのものをひとまとめにする概念思考もできるそうだ。脳の大きさ、構造からもそれは明らかで、ハトやカモ類に比べて大脳が数倍も重くて、脳化指数という脳の重さと体重の比率だと、ネコやイヌより上に来る。

このほか視力は人間よりはるかに優れており、色もわかるし、夜でも見える。反面、嗅覚は弱いそうだ。腐りかけた残飯でも平気なのはそういうわけらしい。

ただし、人間と比較する形で、知能や能力の優劣を云々するのは意味がなく、動物の能力とはその種特有の行動や判断を引き出す力だと、安易な擬人化に釘をさしている。

本書のおかげで街を歩いていると、ますますカラスが気になるようになってきた。

★★