写真術

最近、写真にこっている。この半年間におしたシャッターの数の方がそれ以前の合計より多いはずだ。やはり、写真共有サイトFlickr!に加入したことが大きい。自分の撮った写真に対し、世界中の人から何らかの反応をもらえるかもしれないという可能性(今の段階ではまだ可能性と書いた方が正確だ)は、かなり志気を向上させてくれることなのだ。http://www.flickr.com/photos/chez_sugi/から見られるので、ご用とお急ぎでない方はご覧ください。

散歩には必ずカメラを持ち歩くようになり、シャッターをおす経験を重ねるにしたがって、写真の撮り方というのがわずかながらわかってきたような気がする。自分用の備忘録として、いくつかポイントを書き留めておくことにする。

最初に知っておかなくてはいけないのは、写真には目的に応じて二つのカテゴリーがあるということだ。記録としての写真と、表現としての写真だ。前者は、まず、ある被写体を記録する必要または衝動があって、その手段として写真がある。報道写真、観光地の記念写真などはこちらに属する。後者は、写真を撮ることそのものが目的であり、被写体はそのときどきによって入れ替え可能な飾りに過ぎない。

この二つのカテゴリーは明確にわけられるものではなく、かなりの部分がオーバーラップしているし、実際に写真を撮るときは、被写体にひかれる衝動と、それをどう写真として表現すべきかという冷静な態度が、同時並行的に存在している。問題は二つのうちどちらに重点を置くかによって撮り方が異なることだ。記録ということでいえば、被写体はフレームの中にすべて収まっていなくてはいけないし、ピントは隅々まであっていたほうがいい。だが表現という見地からみれば、そんな写真は退屈きわまりないのだ。自分がどちらのカテゴリーの写真を撮るのかをシャッターを切る瞬間に意識する必要がある。

以下に書き留めるメモは主として「表現」としての写真を撮るときの話だ。ここに書いたとおりにぼくができているというわけではなく、事後的に「ああこうすればよかったんだ」と了解しながらもなかなか実践できないことをあつめている。

  • 写真が映すのは視線だ――別のところにも書いたが、写真は見ているものを映すのではなく、自分がそれをどこからどんな角度でみているのかということを記録する。その視線はシャープであればシャープであるほどよい。だから、ぼんやりといい風景だなと思うものをそのまま映してもだめで、必ずその中からどこか一点に注目しなくていけない。注目できるものがないとしたら、それは写真には映らない風景なのだ。
  • 切る勇気――対称性を強調したい場合を除いて、被写体はフレームのはじにあったほうが動きがあって面白い写真になる。さらに被写体をフレームに収めることにこだわらず、その中の一部を切り取った方が、強い印象を残せる。だが、少なくとも最初は被写体にひかれたわけだから、それをフレームから追い出すというのは、衝動に逆らうことになるし、勇気が必要だ。全体とアップを1枚ずつ撮るか、あるいは、今の高解像度のデジカメなら撮ってからトリミングしても十分解像度を確保できるので、撮るときは全部収めてしまってもいいかもしれない。
  • ぼけとつっこみ――写真の特徴としてピントがあった部分はくっきり写り、ピントからはずれるとぼやけるが、これを効果的に使えばめりはりがついた写真になる。具体的には、絞りを開けば(同じ露出ならシャッタースピードをあげれば)ぼける領域が広くなるはずなのだが、コンパクトデジカメの場合、最大限に絞りを開いても、ほとんどぼけてくれない。それでもぼけの効果を得たいときは、被写体にはできる限り近づいてレンズを望遠にすればいい。それができないときは、(邪道だが)撮影時には全体をくっきり撮って、あとでPhotoshopなどのレタッチソフトを使ってぼかすこともできる。
  • 遠近両用――視線やぼけの話と関連するが、1枚の写真にはカメラから等距離のものだけ映すのではなく、近いものから遠いものまでめりはりをつけたほうがいい。遠近法のパースが感じられれば視線の誘導にもなるし、単純にななめの線があるだけでもおもしろみがでてくる。
  • 道具を知る――カメラのマニュアルにはちゃんと目を通そう。ストロボのオフの仕方、保存形式の変更、露出補正、絞り/シャッター速度の組み合わせ変更、オートフォーカスの方式など設定できることは知っていても、具体的な手順を把握しておかないと、現場で調べながら設定しようとは絶対に思わないからだ。
  • ハイライトを基準に――いまやレタッチソフトでいくらでも画像を加工できる時代だが、それでも救えないケースがいくつかある。そのひとつが露出オーバーだ。露出アンダーは補正できるが、露出オーバーの焼き付いたような白はどうあがいても白のままだ。自分で露出をあわせるなら撮影時にこるのはやめてとりあえず一番あかるいところにあわせて撮るか、あるいはカメラに適当にまかせておいた方がいいと思う。あとからいくらでも補正できるからだ。特にRAWモードで記録できるカメラなら撮影後に操作できる範囲が広いので、なおさら自動露出がお勧めだ。
  • 手ぶれ防止――救えないケースのもうひとつが手ぶれだ。でかける時間が遅いのですぐに暗くなってしまうことが多い。夕暮れや夜の写真も魅力的なのだが、どうしても手ぶれが発生しやすくなる。かといってフラッシュをたくと平板な写真になってしまうし、三脚を持ち歩くのも骨がおれる。最近のデジカメには手ぶれ補正機能がついていたり高感度撮影が可能なものもあるが、それでも限界がある。仕方ないといえば仕方ないのだが、少しでも手ぶれする確率を減らすなら、次のような方法がある。カメラをしっかりホールドして脇をしめるという方法のほかに、①カメラを水平や垂直な場所に接地して撮る。②自分の身体を壁にもたせかけたり座ったりする。③連写で複数枚続けて撮る(下手な鉄砲も数打ちゃ当る)。④写真の神様に祈る。