innerchild『遙 ニライ』

作・演出:小手伸也/吉祥寺シアター/指3200円/2005-09-17 19:00/★★★★

出演:古澤龍児、石村実伽、小手伸也、今村佳岳、小掠あずき、森岡弘一郎、笠井里美、児島功一、根岸絵美、池内直樹、金子恵、土屋雄、宍倉靖二、岩崎龍、櫻井無樹、石川カナエ、中谷千絵、菊岡理紗、三宅法仁

アイヌと琉球人という日本列島の南北両端に居住する二つの民族。彼らの共通点を挙げる学説はいくつかあるようだけど、これは物語として、彼らの住む二つの国の間の不思議なつながりを描いた作品だ。生と死、愛、戦争といった基本的なパーツのみで、余計な仕掛けや複雑な感情表現はないのだが、そのストレートさがまさに神話といっていいような世界を舞台の上に作り上げていたと思う。すばらしい。

innerchildは初見。客演でおかしなデブの役ばかりやっている印象がある小手伸也は自分の劇団ではこういう芝居を書いているのかと、うれしい驚きがあった。

この舞台の稽古がはじまる前に、出演予定者の一人(女性)が事故で亡くなったらしい。彼女の魂に届けようとする意志が、この作品のもつ力につながったのかもしれない。最後にパンフレットの小出伸也の言葉から引用する。

「みやげ(土産)」という言葉の語源はアイヌ語の「ミアンゲ(=身をあげる)」だと言われています、アイヌ(人間)にとって動植物のカムイ(神)の死は即衣食につながる感謝すべきもの。自分たちが生きるために、その身を捧げてくれたことに対する敬意に溢れた言葉だと思います。彼女はきっと「死」の何たるかを教えようとしてくれたんだと思う。それはまさに「ミアンゲ」で、僕らは彼女の死から掛け替えのない宝と傷を得た。