青年団『ソウル市民 昭和望郷編』

作・演出:平田オリザ/吉祥寺シアター/指定席3500円/2006-12-09 19:30/★★★

出演:井上三奈子、福士史麻、松井周、荻野友里、山本雅幸、高橋智子、小林智、永井秀樹、森内美由紀、古舘寛治、河村竜也、古屋隆太、金旻緒、工藤倫子、鈴木智香子、長野海、渡辺香奈、山口ゆかり、大竹直、山本裕子、村田牧子、二反田幸平、橋田新菜、後藤麻美、堀夏子、志賀廣太郎(声)、申瑞季(声)

日本統治時代のソウルで文房具商を営む篠崎家の日常をアイロニーとユーモアを織り交ぜながら描いてきたシリーズの三作目。一応完結編らしい。一作目は1909年、二作目は1919年が舞台だったが、今回はさらに10年あとの1929年、昭和恐慌の時期が舞台になっている。

植民地経営が長期化し、現地生まれの日本人、支配層にとりたてられる朝鮮人が出てきて社会的に安定感が出てきた一方、不況は深刻で閉塞感がひろがっている。人々の目は「新天地」満州に向かっていた。篠崎家も例外でなく、今回の物語は、当主夫妻が満州視察で不在の中、その子供たちを中心に展開されている。

植民地主義の善悪をあげつらうのでなく、そこで暮らす人々の交わす言葉や立ち振るまいを通して、その実相が浮かび上がってくるのは今まで通りだが、今回は篠崎家の繁栄と没落を描く年代記的な要素を強く感じた。また、笑いの部分がパワーアップしていて、テーマと裏腹に大笑いできる芝居だった。