ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず~岸田國士一幕劇コレクション~』

ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず~岸田國士一幕劇コレクション~』

作:岸田國士、潤色・構成・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/青山円形劇場/指定6500円/2007-05-12 19:00/★★★

出演:松永玲子、みのすけ、村岡希美、長田奈麻、新谷真弓、安澤千草、廣川三憲、藤田秀世、植木夏十、大山鎬則、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗、緒川たまき、大河内浩、植本潤、松野有里己、萩原聖人

13ヶ月ぶりのナイロン。今までとまったくちがうところから題材をとっていることもあり、最初、しばらくぶりに会う親戚のような気詰まりな感じがしたが、ナイロンはやっぱりナイロンで、ふだんの100℃というほどはじけた感じはないものの、ナイロン36℃くらいの人肌でちょうどいい感触の舞台だった。

今回の舞台は、岸田國士(「國士」は「くにお」と読む)という劇作家が、大正末から昭和初めに書いた7編の短編をひとつの街の出来事として再構成したものだ。そんな昔の戯曲古くさいんじゃないかと思ってしまうが、そんなことは全然なく、市井に暮らす人々の日常を穏やかでアイロニカルな視線からみつめていて、その視線がとても現代的だった。とくに感動的な台詞や場面があるわけでなく、平易な言葉で淡々とそれぞれの物語が進んでゆくのだけど、それらをリズミカルにからみあわせるケラリーノ・サンドロヴィッチの演出手法は見事だなとあらためて思った。

現代劇と一番ちがうのは女優たちのほとんどが和服を着ていることで、その和服がモダンで涼しげでとてもよかったのだった。

戯曲は小説以上に古い作品が急速に忘れられてしまうので、こういう試みをもっとやった方がいいような気がするが、同時にそろそろケラリーノ・サンドロヴィッチの新作がみたいと思っていたところに、12月の次回公演新作というチラシがはさまっていた。楽しみだ。