サンプル『カロリーの消費』

サンプル『カロリーの消費』

作・演出:松井周/三鷹市芸術文化センター星のホール/指定席2500円/2007-09-22 19:00/★★★

出演:渡辺香奈、山中隆次郎、辻美奈子、羽場睦子、米村亮太朗、古屋隆太、山崎ルキノ、古舘寛治、大竹直

今回チェルフィッチュの舞台に出ている人が多く出演しているからではないだろうが、冒頭のぎこちない身体の動きはチェルフィッチュのパロディーかと思った。それでも、中心になるのは青年団の役者で、ふだん平田オリザ作品だと、あえて没個性的に演じているのが、こちらではとことんはじけているのをみて、ひょっとしたら役者も楽しいかもしれないと思ったりした。

仮面夫婦になっている若い夫婦、長期入院している夫の母、入院患者を生かさず殺さず薬漬けにして利潤をあげている病院とそこで働く人々のただれた人間関係、発作のように自分探しをする若者たち。そこに、男性看護師が若夫婦の夫の母を連れてベッドごと失踪するという事件が発生する……。

人間の活動を二つにわけると、食料を調達してカロリーを摂取することと、そのカロリーを消費することだ。現代では、前者はあまり苦労することなく、もっぱらいかにカロリーを消費するかということに心血がそそがれている。別の場所にいったり、生活をかえようとしても、それは結局別のカロリー消費方法に変えただけのことなのだ。そこには希望はなく静かな絶望があるばかりで、笑ってしまうしかない。いや、全編あふれかえる笑いはほんとうにつぼだった。

ラストの全然ハモっていないハーモニーに希望を感じるべきなのだろうか。