KERA・MAP『あれから』

KERA・MAP『あれから』

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ/世田谷パブリックシアター/S席8500円/2008-12-27 19:00/★★★

出演:余貴美子、高橋ひとみ、萩原聖人、岩佐真悠子、柄本佑、金井勇太、赤堀雅秋、村上大樹、三上真史、植木夏十、山西惇、渡辺いっけい、高橋克実

今年32本目にして最後の芝居。年間の新記録更新だ。年頭はスロースタートだったのでまさかこんなにたくさん観ることになるとは思ってもみなかった。

二組の中年夫婦が繰り広げる、洒脱でハートウォーミングなウッディ・アレン調のコメディ。高校時代仲良しだったニチカとミラは混雑するケーキ屋で30年ぶりに再会する。ニチカは大人のおもちゃ製造会社社長夫人にして翻訳家、ミラは写真家の妻でカウンセリング通い、と別々の道を歩んでいる二人だが、それぞれ家庭生活に火種をかかえていた……。

一昔前のケラリーノ・サンドロヴィッチは大傑作の合間に凡作が入るという感じだったが、このところは脂がのっているというか、コンスタントにマスターピースをうみだしている感じだ。定番のウェルメイドなフォーマットを採用しながら、そこに独自のナンセンスな笑いとちょっとずれた世界観をまぜこむスタイルがすっかり定着した。この作品も例外じゃない。全体的なまとまりの良さと引き替えに、最近の作品でちょっぴり物足りないのは、脳天まで突き抜けるようなはちゃめちゃな笑いと、鳥肌がたつようなすごみが影をひそめていることだけど、今回、ミラの語る海岸の夢のシーンは脳天まで突き抜けて鳥肌が立った。あれをストーリーの中核をになう場面ではなく、隠し味的に使うのは、ほんとうに円熟の技だ。

総じて、今年最後の芝居にふさわしい舞台だった。