『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』

『わたしが悲しくないのはあなたが遠いから』

隣接するイースト、ウエストという二つの劇場で同じキャストがいったりきたりしながら別々の公演を上演するという果敢なスタイル。ぼくはそのうちイーストだけみたので確かなことはいえないが、おそらく演じている役の割り当てと細部の違いはあっても基本どちらも同じ物語が上演されているのではなかろうか。

隣り合って生まれても、少しずつ距離が離れていき片やふとした偶然で悲劇に巻き込まれ、片や大過なく平穏な生涯を送る。理不尽といえば理不尽だ。生き続ける方はこのことをどう受けとめればいいのだろう。そういう素朴な戸惑いを、抽象的に煮詰めたような作品だ。この二つの間の壁を壊すためにテロに走る人物が登場するのがとてもアクチュアルでヴィヴィッドに感じた。

柴幸男さん最近何しているのかな思っていたのだが、従来の宇宙と人生を直結させるようなセカイ系の抽象に同時代的な問題意識を織り交ぜてきて、いい方向に進化している気がする。ただ、ラストはその方向を徹底してもっとインパクトのある盛り上げ方もできたかもしれない。

チラシをいれる袋のデザインはウエストの方がかっこよかった。

作・演出:柴幸男/東京芸術劇場シアターイースト/自由席4000円/2017-10-07 19:30/★★★

出演:大石将弘、岡田智代、串尾一輝、椿真由美、野上絹代、端田新菜、藤谷理子、森岡光