イキウメ『散歩する侵略者』

散歩する侵略者

イキウメの代表作といわれていてこれが4回目くらいの上演らしいのだがぼくは未見。だから黒沢清監督による映画も公開されているがまずは芝居をみたかった(今日見にきていた人の会話によると、映画と全然違うということだったが)。

別居中の夫婦の夫真治は三日間失踪した後海辺で発見され保護される。彼はまったく人格が変わり社会を構成する基本的な概念を理解していない状態だった。彼はそれまでの仕事にはいかず散歩と称して毎日町のあちこちに出かけてゆく。妻鳴海は最初戸惑うがやがてそんな真治にあらためて愛情を感じるようになる。そんな中町では老女によるおぞましい無理心中事件がおき、特定の概念を失う奇病が流行する。そして、取材のため東京からやってきたジャーナリストは自分が宇宙人だという奇妙な少年と出会う……。

夫婦愛がこの物語を貫く基本線のひとつだが、その背景には戦争へと向かう情勢がある。職をやめたばかりの丸尾は皮肉屋で迫りくる戦争もすべてをリセットしてくれて大歓迎というスタンスだった。ところが私有財産という概念を奪われてから反戦運動に目覚めるのが興味深い。愛と戦争が交錯して物語は宙づりのままおわる。

決め台詞がかっこいい。忘れないようにメモっておく。

「ありがとう。それをいただくよ。」

作・演出:前川知大/シアタートラム/指定席4800円/2017-11-03 19:00/★★★

出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛、内田慈、松岡依都美、栩原楽人、天野はな、板垣雄亮