青年団リンク ホエイ 『郷愁の丘 ロマントピア』

郷愁の丘ロマントピア

北海道三部作の第三作。幕末の蝦夷警備、戦争中の火山誕生ときて、今回は現代の夕張市内大夕張と呼ばれる地域を舞台にしている。大夕張はかつて炭坑で栄えたが、数十人の人命を奪う事故に続いて炭坑は閉山し、結局ダム開発で町は水没してしまう。

ダムを見下ろす高台の駐車場。そこにはかつて町にあった碑が集められている。まるで町を弔う墓標のように。そこにやってきたのはかつて炭坑夫として働いていた老人たち。取材のため久しぶりに集まったのだ。もうみんな80代、90代だ。

町は消えたが、記憶はかろうじて老人たちの中に残っている。だがそれもやがて彼らとともに消えてゆく。元からそこに存在してなかったかのように跡形もなく。でも、それまでの間、彼らは待ち続ける。待たなくてはいけない。

アフタートークで山田百次さんが、存在しているのに存在してないことになっている人たちに光をあてるのが自分の一貫したモチーフだということを言っていたが、今回はまさにそれが前面に出た作品だった。

今回の公演をもってホエイは青年団リンクを卒業して独立するとのこと。めでたい。

作・演出:山田百次、プロデュース:河村竜也/こまばアゴラ劇場/自由席3200円/2018-01-13 19:30/★★★

出演:山田百次、松本亮、河村竜也、武谷公雄、長野海、斉藤祐一、石川彰子