お布団『破壊された女』

古典劇がベースの作品が主体のお布団初のオリジナル作品。とはいえ、古典劇のエッセンスが感じられる作品だ。

古典劇では複数の美徳や義務の間の葛藤がテーマとなるが、本作でも、(あたかも神と人の関係のように)クリエーターは自らが生み出したキャラクターをどのように操作してもよいという権利と、そのキャラクターが「壊された」ことで「彼女」を崇拝する「女」もまた「壊され」てしまうという葛藤的な構造が描かれている。古典劇では、葛藤はひとりの人格の上に起こるので、悲劇となって工事の解決を促すが、本作では、実は葛藤の場となる主体は存在せず、キャラクターである「彼女」も「女」も一方的に「壊されて」いくだけなのが、古典劇との違いだ。

「彼女」→「女」という二層構造の中にもうひとつ演者である「わたし」(=緒沢麻友)の層がまぎれこむ。コンビニのバイトでいやな客に絡まれた話が挟まれつつ、頻繁に床に倒れたり苛酷な動きを繰り返している。「女」の層と「わたし」の層の境界は曖昧だ。結局、どこにも境界なんてないんじゃないかというメッセージを感じた。

セリフには古典劇譲りのかたさが残るけど、音楽(櫻内憧海)、照明、字幕などを駆使して観客の注意力をコントロールする演出にみがきがかかっている。

作・演出:得地弘基/長者スタジオ/自由席2000円/2019-02-10 19:00/★★

出演:緒沢麻友