ジエン社『ボードゲームと種の起原 拡張版』

ボードゲームと種の起原 拡張版

12月に見た公演(以下基本版と書く)の拡張版。役者の数が4人から7人に増えていた。時系列的には基本版の後日談で、3人の登場人物がそのままの役柄で登場している。とはいえ、元は妖精の森出身のはずのチロルは前作でもかなり人間化していたが今作ではほぼふつうの人間の女性と変わらないメンタリティと所作を身につけ、前作の主人公だった中大兄妹の兄と同居して恋人関係になっている。そこに加わるのはおなじくボードゲーム愛好家で、東京から中大阿知賀たちが住む街に引っ越してきたエレとその恋人奈良さん。そして近隣のボドゲ仲間根利と自称コミ障の女そつある。

ゲームがかなり変化していた。基本版では抽象度が高くてある世界館の表現と行った感じだったものが、人狼をベースにしたchなと遊べるものになっていた。それはゲームと劇との関係性が、内的なものから外的なものに変化したということでもある。外的になったのはゲームだけなく、中大兄妹+αの物語だったのが、群像劇になっている。完成度ということでいうとひょっとすると基本版の方がまとまりがあって上からもしれないけど、こういうふわふわして割り切れない感じもまたいい。

ジエン社は、ニッチなテーマ設定や、独特な時間構成の難解さで、ちょっと集客に苦労しているようではあるが、実はそここそが魅力で、今一番みるのを楽しみにしている。もっと注目されていいはずだ。

作・演出:山本健介/こまばアゴラ劇場/自由席3800円/2019-06-01 19:00/★★★

出演:須貝英、高橋ルネ、寺内淳志、中野あき、名古屋愛、湯口光穂、善積元