innerchild『星合』

innerchild『星合』

作・演出:小手伸也/シアタートラム/指定席4000円/2010-04-17 19:00/★

出演:大内厚雄、小手伸也、長谷川葉生、竜史、金子恵、横田健介、善澄真記、和田真希子、大沼優記、大山真子、田口愛、古内啓子、安倍康律、澪乃せいら、初谷至彦、町田誠也、今林久弥、島村比呂樹、川島佳帆里、井俣太良、溝口明日美、石川カナエ、狩野和馬、富田遊右紀、鈴木麻里、菊岡理紗

2017年夏、南西諸島にあるとされる架空の島星合島を舞台に、その島につくられた民間の宇宙開発センターによる有人ロケット打ち上げと、10年ごとの七夕祭り、そのたびにあらわれる謎の男夏彦、そしてこの夏300年前からこの島に伝わる秘められた伝説の謎があきらかになる……。

シンプルな情感と、神話をベースにした複雑な世界観、というのがぼくが勝手に作った innerchild のキャッチフレーズだけど、今回魅力の一つである世界観が結果としてシンプルになり、単なるメロドラマで終わってしまった気がする。よくできたメロドラマには違いないが。

最初に伝説として語られた、浦島太郎、羽衣伝説、七夕伝説をミックスしたような物語はおもしろいけど、二度目に語られる実際に起きたとされる歴史も、ほとんど同じで、二回にわけて語る意味がないというか、二度目は、もっとリアルな世界観をベースにした方が効果的だった気がする。さらに、輪廻や、死者の魂を実体的なものとして扱ってしまうと、そこに救いがあらかじめ用意され、感動が疎外されてしまう気がする。感動というのは細い穴をくぐりぬけてこそのものなのに、穴をあらかじめ広げてほしくはないのだ。

表面的には言及されてないけど、この物語は『指輪物語』にもヒントを得ているような気がする。天(=ヴァリノール)からやってきて島(=中つ国)に留まる長命な人々。彼らの時代の終わり。もっとそっちにスポットライトをあてたほうが深い物語になったと思う。