水素74%『バラバラ姉妹に憐れみを』

今回に限らず田川啓介の作品はみなそうなのだが、登場人物はみなだれかから掛け値なしの全幅の愛情を得ることを希っている。でも、求めた相手はまったく無関心で別の人に愛情を求める。というn=5のウロロボスの蛇的な構造がある。その円環の内側にはただ一人イマジナリーな女性が存在していて、彼女は彼らが求める全幅の愛情を与えてくれるかにみえる。

なんだか今回はこの円環をめぐっているうちにその同工異曲さに眠くなってしまった。その状況に変化をもたらすはずの謎の女性も、とってつけたようで、存在になんのリアリティー(いうまでもないけど演劇的リアリティーのこと)も感じられず、ぽかんと口をあけてみているしかなかった。

いろいろな意味で外部性のなさを感じた。うーん、次回作に期待かな。

作・演出:田川啓介/こまばアゴラ劇場/自由席2500円/2012-11-03 19:00/★

出演:川隅奈保子、善積元、飯田一期、野津あおい、黒木絵美花、申瑞季