遊園地再生事業団『夏の終わりの妹』

夏の終わりの妹

中野区と新宿区に接する渋谷区のはずれの町汝滑町(うぬぬめまち)には独自のインタビュアー資格制度というのがあり、そこの住民は試験に合格すると誰にでもインタビューを申し込む権利が得られるが、資格をもってない人は質問をしてはいけないという決まりがある。共働きの主婦謝花素子は、学生だった10年前にみた故郷沖縄を舞台にした映画『夏の妹』を撮った映画監督(名前は明らかにされないが大島渚だ)になぜこんなわからない映画を撮ったのかをききたくて、毎回インタビュアーの資格試験を受けているが、勉強する時間も気力もないので落ち続けている。震災を機に彼女のそんな姿勢や試験の制度に変化が訪れ、彼女は合格する……

中では映画『夏の妹』の内容も紹介される。1972年の沖縄復帰直後が舞台。東京に住む少女のもとに沖縄から来たという若者から手紙が届く。自分の母親は自分が生まれる前二人の男性と同時に付き合っていてどちらがその父親かわからない。そのうち一人が君のお父さんでひょっとしたらぼくたちは兄妹かもしれないという内容だった。少女は彼に会いに沖縄に向かう……とここだけきくといい感じの話だが、いろいろはちゃめちゃになっていくらしい。

というのがこの舞台の元となった宮沢章夫さん自身による小説版『夏の終わりの妹』の概要で、舞台版も基本的にこの小説を読むリーディングという形になっている。ただその読み方が独特で5人の俳優が舞台上をいくつかのルールに沿って動き回りながら何度も繰り返したり順番を入れ替えたりしながら読んでいくという形をとっている。そして合間には俳優たち自身やその他の人たちに対して行ったインタビューの回答が読み上げられたりする。

骨格となるストーリーはあまり変化のない静的なものだし、俳優たちの動きにそれほどヴァリエーションがあるわけでもないので、単調さを感じることもある。そういうことを含めて見終わると『夏の妹」と同じくなんだかわからない気持ちにさせられる。それがこの作品のねらいなのかもしれない。

宮沢章夫さんの最近の作品は社会をヴィヴィッドにみすえながら、その視線になんともいえない温かさを感じる。そこがいい。

岡室美奈子さんとのアフタートークもおもしろかった。今見た舞台に関してそういうことなんだという発見もあったし、舞台とあまり関係のない脱線の部分もおもしろい。

この作品の中でもたまたまアフタートークでもそうだったが、見ている人にはひとつの問がつきつけられる。

「あなたは誰ですか?」

作・演出:宮沢章夫/あうるスポット/自由席4500円/2013-09-15 14:00/★★

出演:小浜正寛、松村翔子、やついいちろう、上村聡、牛尾千聖