青年団国際演劇交流プロジェクト『愛のおわり[日本版]』

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舞台がまるでボクシングのリングみたいに男と女が対角線上に位置し言葉による戦いが行われる。ただしほんとうのボクシングとパンチの応酬はなく攻撃するのはどちらか一方のみ。前半は男が攻撃し、後半は攻守所をかえて女のターンになる。賭けられているのは二人の「愛のおわり」だ。

最初に別れを切り出す男の攻撃は抽象的だ。どうどうめぐりしていて、ひとりよがりで自己満足的だ。それに対して後半の女の攻撃は具体的で、イメージを喚起し、だから男を急所をおさえられ完膚なきまでに叩きのめされてしまう。女を演じた兵藤公美さんがとにかくかっこうよかった。

日本語のセリフは元の翻訳に平田オリザさんが出演者や作者の意見を取り入れて全面的に見なおしたものらしい。だから「こたつでみかん」とか「古墳」とかの日本でイメージがつかみやすい言葉がでてきたのだ。ハーフタイムに登場する合唱団の子どもたちが歌う歌も「海」(松原遠くの方)になっていた。

作・演出のパスカル・ランペールさんも平田オリザさんも同時期に離婚したとのことで(平田さんの方は再婚したが)、セリフのひとつにひとつにその痛切さが込められているようだった。

作・演出:パスカル・ランペール(日本語監修:平田オリザ、翻訳:平野暁人)/神奈川芸術劇場大スタジオ/自由席3000円/2013-10-12 14:00/★★★

出演:兵藤公美、太田宏、赤い靴児童合唱団