城山羊の会『仲直りするために果物を』

仲直りするために果物を

前作『トロワグロ』で岸田戯曲賞を受賞して満を持しての新作。

河原のオンボロ借家に住む貧しい兄妹のもとに大家がたまった家賃のとりたてにやってくる。その大家もこわもての不動産屋に金を借りていて切羽詰まっている。借家に大家、不動産屋、その水商売の彼女が集まって一悶着起こる中、近所に住む一見無関係な大学教師夫婦が散歩にやってくる……。

このところ、もともとあったどぎつさや暴力性を隠蔽して匂わせるだけにすることで、「洗練」という言葉を人々が口にしそうな感じになってきたが(戯曲賞の受賞もそういう背景があったような気がする)、ぼくはちょっと物足りなさを感じていた。受賞を機にリミッターを解き放ったのか今回は暴力性が全開になっているシーンがあった。ひどいとしかいいようがないんだけど、口をあんぐりあけて舞台に見入ってしまった。それを完全に拒絶するか許容するか二つにひとつという気がしたが、今回は許容側に評価の針をふりきることにした。

開演時間を間違えて10分近く遅れて入ったが内容は十分把握できたと思っていたが、念のために買った戯曲で確認したところ、人間関係の微妙なニュアンスが抜け落ちていたことに気がつく。神は細部に宿る。

大学教師役の松井周さんの役名が森元隆樹、つまり三鷹市芸術文化センターの名物演劇担当の方の名前になっていて笑う。

作・演出:山内ケンジ/東京芸術劇場シアターウエスト/指定席3000円/2015-05-30 15:00/★★★

出演:吉田彩乃、遠藤雄弥、岡部たかし、岩谷健司、東加奈子、松井周、石橋けい