演劇ノート

野田地図『MIWA』

「えー、美輪明宏?!」と最初この公演の話をきいたときは what?, how?, why? と疑問の洪水だった。見たことはないけどテレビのスピリチュアル番組の片棒を担いでいた人というイメージが強かったのだ。 しかし、さすが野田秀樹。美輪明宏という類まれなキャラクターのたどった人生の軌跡を見事に演劇化していた。長崎...

文学座アトリエの会『未来を忘れる』

サンプルの松井周の書き下ろし作品ということで初めての文学座。 薬品の力でゴキブリの姿で生まれた新世代の人間が語る黙示録的な近未来日本史。彼の父と母(ふたりとも普通の人間)の物語が主軸になっている。 いつもそうなんだけど、松井周の戯曲は観念的だ。おそらくサンプル作品では俳優との稽古の中...

青年団国際演劇交流プロジェクト『愛のおわり[日本版]』

舞台がまるでボクシングのリングみたいに男と女が対角線上に位置し言葉による戦いが行われる。ただしほんとうのボクシングとパンチの応酬はなく攻撃するのはどちらか一方のみ。前半は男が攻撃し、後半は攻守所をかえて女のターンになる。賭けられているのは二人の「愛のおわり」だ。 最初に別れを切り出...

五反田団『五反田の朝焼け』

五反田団の劇団員だけで作った舞台。前作『五反田の夜』から2年ぶりだ。登場人物が共通しているので、一瞬同じ作品の再演に来てしまったのかと思ったが、続編だった。前作もおかしかったけど、今回も腹を抱えて笑えた。連休最終日の憂鬱を吹き飛ばしてくれた。 元祖アンドロイド演劇ということで人形の...

ハイバイ『月光のつゝしみ』

2002年に岩松了自身の演出、竹中直人、桃井かおり主演でみたときは軽い芝居だと思っていた。今日観て思ったのは、岩松了の書くセリフの困難さだ。 姉弟の物語。年の離れた若い妻と結婚したばかりの弟の家に、事情があって職を辞した姉が一時的に同居している。それにたまたま遊びに来ている同郷の友...

遊園地再生事業団『夏の終わりの妹』

中野区と新宿区に接する渋谷区のはずれの町汝滑町(うぬぬめまち)には独自のインタビュアー資格制度というのがあり、そこの住民は試験に合格すると誰にでもインタビューを申し込む権利が得られるが、資格をもってない人は質問をしてはいけないという決まりがある。共働きの主婦謝花素子は、学生だった...

劇団、<del>本谷有希子</del>『ぬるい毒』

今回は本谷有希子は原作のみで脚本と演出が『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督。映像の人が舞台やるとけっこう微妙なことが多いので、どうかなと思っていたが、すばらしい仕上がりで驚いた。あら探しでいうと、舞台空間での人の動きをもう少しダイナミックにしたほうがいいとかそれくらいだ。 ほ...

ミクニヤナイハラプロジェクト『前向き!タイモン』

なんだか前半寝落ちとかいうツイートが散見するので、どんな芝居か不安混じりで見にいったら、おそろしい早口で次から次へと繰り出される言葉の強度、それぞれのエピソードが喚起する物語の奔流で瞬きするのも忘れるくらいだった。 登場人物は3人。祖父が一代で築き上げた財閥を引き継いだ御曹司タイモ...

カタルシツ『地下室の手記』

イキウメの別館カタルシツ第1回目はドストエフスキーの小説『地下室の手記』の舞台化。ほぼ一人芝居になりそうで集中力がもつかどうかちょっと不安だったが、安井順平さんの語りが予想以上にすばらしくて飽きることがなかった。一人芝居は客席との対話なのだ。通常の俳優としての力量とは別の能力を要...

FUKAIPRODUCE羽衣『Still on a roll』

水商売の年下の恋人に小遣いをもらいながら暮らす無職中年男性が、恋人を待つ間に夢みる想像の世界〜どこかの広大な農場〜を舞台にしたミュージカル。この明るさ全開の歌と踊りにはあまり感情移入できなかったのだが、現実の世界にかえってきてからがよかった。スナックにつとめる恋人とパトロン男性の...

シベリア少女鉄道『遙か遠く同じ空の下で君に贈る声援2013』

初のシベ少。途中3/4くらいは、その乗りの過剰さを含めて小劇場演劇の王道をいく感じで、ただ各キャラクターに決めゼリフがあって、それをいったあとに録音された笑い声が入るのが往年のアメリカのシットコムみたいで、いまの小劇場演劇ではユニークだと思った。場所は昔ながらの喫茶店、勘違いキャ...

M&Oplaysプロデュース『不道徳教室』

基本的に芝居の前には予習をしない。感動を最大化するには事前に余計な予備知識はない方がいいと思っていたからだ、でも、今回は多少なりとも補助線があればぼくの貧弱な想像力が正しい方向にジャンプできただろうとこぼしたミルクを嘆いてしまう。 タイトルとキャストから想像できるように大森南朋演じ...

重力/Note『リスボン@ペソア』

最初にはじめたのが誰なのかほんとうのところはわからないが、ぼくがこれまでみてきた範囲でいうと、チェルフィッチュが痙攣的な身体だの動き、振りつけとともにセリフをいう方法をはじめ、京都の劇団地点が、セリフに奇妙な抑揚や強弱をつけて異化する方法を編み出し、それを既存の戯曲に適用した。今...

城山羊の会『効率の優先』

あるオフィスの一室が舞台。美人で有能な部長の下、多忙をきわめている部署だが、いろいろな出来事の連鎖で社員の間で互いの間の好悪の感情があちこちで噴出し、仕事どころではなくなっていく。やがてそれが痛ましい事件、事故につながっていくわけだが、それでも彼らは仕事を続けるためと称してそれを...

イキウメ『獣の柱 まとめ*図書館的人生㊦』

前回の「まとめ」は短編集だったが、今回は長編。 見たものは誰でもとてつもない幸福感に恍惚とし飲み食いも何もできなくなってしまい、そのまま放置すると死に至るという不思議な隕石が落ちてきた数年後、同じ物質でできた巨大な柱が世界各地の都市に落下する。ある人口密度を越えると柱が落ちてくると...

酒とつまみ『もうひとり』

去年の8月以来、9ヶ月ぶりの下北沢での観劇。 酒とつまみというのはナイロン100℃の村岡希美さんと元猫ニャーの池谷のぶえさんのユニット。 他人の家に「寄生」するかのように渡り歩いて暮らす浜子と現家主の桐江。この二人の登場人物による二人芝居なんだけど、「もうひとり」三人目の(見えない)...

青山円劇カウンシル♯6 ~breath~『いやむしろわすれて草』

2004年つまり9年前の作品の再演だからなのか、前田司郎というより平田オリザが書きそうな家族劇だった。入退院をくりかえす病弱な三女を中心にした四人姉妹の物語。にぎやかな子供時代と病室で過ごす現在が交互に淡々と描かれる。 好意を持つ男性のひくピアノの音を(2004年だから)MDに撮っ...

庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』

最初ペニノじゃなくベニノだと思っていた。ペニノだとなんだか間抜けな感じだし、なんかアレに似ていておかしいと思ったのだ。そうしたらほんとうにアレだった。椅子、チェスの駒、リコーダー、水筒、マスクの把手などあちこちにアレの意匠がちりばめられていて、思わず手を合わせたくなるくらい大量に...

水素74%『半透明のオアシス』

母と二人の娘、そして妹の先輩の女、四人が登場人物。 いつもそうだけど、人と人の関係性が抽象化されて、地球じゃない空気の組成が違う星での物語かと思うくらい。だからその分背景の細かい書き込みは必須。それがないと単に説明不足でリアリティを欠いた話になってしまう。今回60分でとてもコンパク...

シティボーイズミックス PRESENTS 『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』

宮沢章夫さんとシティボーイズの組み合わせに強烈な懐かしさを感じてしまったが、ラジカルガジベリンバシステムを生はもちろん映像でもみたことがないので、その懐かしさになんの根拠もないのだった。しかし、本物であれ偽物であれ、実際にこの目でみなくてはすまないことには変わりがない。 期待に違わ...