虚数をめぐる政治的な寓話

Q

2乗して -1 になる数というのが虚数単位 i の定義ですが、それを見ていた -i が自分も2乗して -1 になるので、i ばかりが虚数単位を名乗るのは不公平だと言い出し、i を追い出して真虚数単位 j として名乗りをあげました。

さて、このお話の続きは……

A

例えば (5+2i)*(8+5i) = (30+41i) という式は (5-2j)*(8-5j) = (30-41j) と虚数部の符号をすべて反対にすることにより書き換えることができて、何の問題もありません。今までの複素数に関する式は符号を変えるだけでそのまま成り立ちます。さらに四則演算についてはすべての項を共役複素数(虚数部の符号を反対にした数)に置き換えても成立することは容易に確かめられるので、(5+2j)*(8+5j) = (30+41j)という式も成り立ちます。四則演算以外も基本的には四則演算の拡張なので、共役複素数のこの性質は引き継がれます。つまり i を j と書き換えた式もそのまま成立するのです。

そこまで対称的なら、もともと imaginary number の i なんだから i に改名すればいいじゃないかと誰かが言い出し、それに j も同意して i と名乗るようになりました。 再び (5+2i)*(8+5i) = (30+41i) です。

虚数単位の王座では元 j 現 i が微笑みをたたえています。見た目はまったく昔追い出した i と変わりません。さて、彼はいったい誰なのでしょう?