あまのじゃく

Q

あまのじゃくってもともとどんなものなの、なんてことは別に知りたくもなんともない。

A

広辞苑には以下の3つの意味が載っていました。

1.昔話に出てくる悪者。人に逆らい、人の邪魔をする。天探女(あまのさぐめ)の系統を引くといわれるが、変形が多い。あまんじゃぐめ。〈壒嚢鈔10〉→うりこひめ。

2.わざと人の言に逆らって、片意地を通す者。

3.仁王や四天王の像がふまえている小鬼。

2番目の意味は知っていましたが、1番目と3番目ははじめてききました。悪者ということだけが共通で、イメージとしては全然違うものですね。

天探女は記紀の中の天稚彦(あめのわかひこ)のエピソードに出てきます。天稚彦は葦原中国を平定するために天照大神によって遣わされたが、任務を忘れ、現在の支配者大国主神の娘を妻としてしまう。なかなか戻ってこない天稚彦のもとへ、雉名鳴女が使者として遣わされてくるが、とりまきの天探女からそのことを伝えられると、矢で雉名鳴女を射殺すが、その矢が天から射返されて、天稚彦自身も死んでしまう。

この天探女はもともと天の動きを知ることの出来るシャーマン的な存在でしたが、このエピソードの中では告げ口をしたものとして描かれ、さらに仏教の伝来とともに異端的な鬼のイメージを負わされていったようです。それに伴って名前も「あまのさぐめ」から「あまのじゃく」へと変化したといわれています。(天稚彦は天若彦とも書けるので、「若」を「じゃく」と読んで、こちらから「あまのじゃく」に転化したという話もありますが、どうもまゆつばです)。

「仁王や四天王の像がふまえている小鬼」の方の起源はまた別で、仏教とともにやってきた四天王の一員の毘沙門天。この神様の腹部についている鬼の面を海若(あまのじゃく)と呼んでいて、それが転じて、ふみつけられた小鬼をさすようになったとのことです。

小鬼としてのあまのじゃくがまず先に生まれて、それに似た音の天探女が習合されたというのが納得できる説のような気がします。あまのじゃくには常にこの二面性がつきまとっています。

あまのじゃくの、もっとも有名な話は瓜子姫ということになります。広辞苑からひきます。

民間説話の一。老婆が川で拾った瓜から生れた瓜子姫が、美しく成長して殿様へ嫁入るための仕度に毎日機はたを織る。そこへあまのじゃくが現れ、姫に化けて嫁入りしようとするが、雀(その他の鳥)のしらせで露顕し、無事に姫は嫁入りする。姫が殺される型もある。桃太郎伝説に似る。瓜子織姫。瓜子姫子。瓜姫。

「姫が殺される型」というのは、姫の皮をはいでそれをあまのじゃくが身にまとうという設定になっているようです。広辞苑に記載された話ではあまのじゃくは女性として描かれているようですが、さまざまなバリエーションの中には、単なる人食い鬼として描かれているものもあるようです。

これも、あまのじゃくの二面性―シャーマン的な女性か小鬼か―をあらわした話だといえます。