『ユリは薔薇をもっている』 by e.e. カミングス

e.e. cummings “lily has a rose”

ユリは薔薇をもっている
(わたしにはない)
「泣かないで親愛なるスミレさん
わたしのをあげるから」

「ああ、どう、どう、どういう顔で
それをつければいいというの?
それをあなたにくれたのは
一番背の高い男の子だというのに」

「二回キスさせてあげれば
彼はべつのをくれるわ
それに彼のお兄さんは
誰にでも親切ないい人よ」

「ああ、だめ、だめ、だめ
薔薇はどうでもいいの
いくら親切でいい人でも
背は高くならないのよ」

ユリは薔薇をもっている
わたしにはひとつもない
そして敗北は勝利にはかなわない(でも
愛は愛以上だ)