山下範久編著『教養としての 世界史の学び方』

具体的な世界史上の出来事ではなく、世界史を記述する歴史学という学問がどういうもので、その記述としての世界史は現状どうあるべきであることになっているかということについてのメタな本。もともと歴史学を学ぼうとする学生の教科書として企画されたというのも頷ける。 第I部は『私たちにとっての「...

グレッグ・イーガン(山岸真編訳)『ビット・プレイヤー』

イーガンの日本で編まれた6冊目の短編集。とはいえ、今回は短編というには少し長めの作品ばかりだ。 『七色覚』は遺伝的な障害を逆手に色覚を人為的に拡張した人々のたどるその後の人生。ちょうど色覚に関する解説記事を読んでいたので、理解しやすかった。苦い結末になりそうでならなかったのはイーガ...

ホエイ『喫茶ティファニー』

まったく予備知識なしに見たので地方の、時代から取り残された喫茶店の話かと思ったら、舞台はどうやら川崎。マルチの勧誘シーンがでてきて一瞬今回はそっちの話かと思わせるが、実は日本に昔からはびこってかえって最近また復活してさえいる民族差別がテーマなのだった。川崎臨海部あたりの在日の人た...

山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品集』

最近文庫で新刊がでて、山尾悠子という名前を初めてきいたのだが、読むならまず初期作品集と銘打ったこちらだろうと大きな本屋にいって入手した。 分類すれば幻想小説なんだけど、まさか日本語圏にここまで幻想世界の構築力にあふれた書き手がいるとは思わなかった。しかもそれが硬質で語彙力豊かな文体...

『チェコSF短編小説集』(ヤロスラフ・オルシャJr編、平野清編訳)

20世紀初めから終わりまでのチェコのSF短編小説を集めた本。収録作は11篇。ロボットという呼称を生み出した巨匠チャペックの作品も含まれているが、そのほかは初めてきく名前だ。編集の都合だろうか、数ページ程度の掌編といったような作品も少なからずあるので、チェコのSFの概況を把握するに...

シスカンパニー『LIFE LIFE LIFE 〜人生の3つのバージョン〜

なんと2ヶ月ぶりの観劇。コクーンの舞台と座席の配置が大幅に変えられて、舞台が真ん中でその周囲に座席がとりまくように配置される、今はなき青山円形劇場のようになっていた。 宇宙物理学者のアンリとその妻の元弁護士のキャリアウーマン、ソニアが夜子どもを寝かしつけようとしていると、明日来るは...

多和田葉子『献灯使』

短編集だが、表題作の『献灯使』は全体の半分以上を占める中編。度重なる災害で衰退し鎖国している未来の日本が舞台。老人は元気で死ななくなり、子どもたちは虚弱になり、老人が子どもたちの介護をするようになっている。二人きりで暮らす、百歳を向かえた義郎とその曾孫無名が主人公。典型的なディス...

ウィル・ワイルズ(茂木健訳)『時間のないホテル』

クリストファー・プリーストが激賞していたというのをどこかでみて読んでみることにした。イギリスの新進作家による巨大なホテルを舞台にした一風変わったSF作品。 前半は不条理系。イベント参加のためイングランドの新開地にできた巨大ホテルに宿泊する主人公ニール・ダブルは、イベントから締め出さ...

藤井太洋『東京の子』

次の東京オリンピックから3年後、2023年が舞台の超近未来小説。日本そして東京は、外国人労働者の受入がスムーズに進み、全体的に軟着陸に成功した感じだ。ただ人々の生活レベルや労働環境は必ずしも改善してはいない。正社員が定時で帰るようになった一方、社員と同等の仕事を低賃金、残業代0、...

ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド(上杉周作、関美和訳)『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

枕として、世界の現状に関する13の簡単な設問があり、それに答えてみてくださいと、言われる。ぼくは本書の性格を知った上で答えてしまったので、8/13とまあまあの正解率だったが、世界的に識者やエリートであってもランダムに選んだより正解率が低いらしい。その原因を分析、考察して10の人間...