KERA・MAP『キネマと恋人』

ウディ・アレン『カイロの紫のバラ』の飜案。舞台は1930年代の日本の梟島という架空の離島に移しかえられているが、基本的なストーリー展開は同じ。恵まれない人妻が毎日のように映画館で買い詰めるうち、贔屓の俳優が演じるキャラクターがスクリーンの向こうからこちらに声をかけてくるというファ...

柴田勝家『ヒト世の永い夢』

ふざけたペンネームだと思っていたが、作品は本格的だった。名前を聞いただけでワクワクしてくる南方熊楠、江戸川乱歩など昭和初期の名士たちが活躍し、粘菌による人工知能を開発し、少女型「人形」に組みこむという、ロマンあふれるSF巨編。 エンタメとしても王道だが、夢と現実をめぐる哲学論議も奥...

ジエン社『ボードゲームと種の起原 拡張版』

12月に見た公演(以下基本版と書く)の拡張版。役者の数が4人から7人に増えていた。時系列的には基本版の後日談で、3人の登場人物がそのままの役柄で登場している。とはいえ、元は妖精の森出身のはずのチロルは前作でもかなり人間化していたが今作ではほぼふつうの人間の女性と変わらないメンタリ...

J.G.バラード(村上博基訳)『ハイ・ライズ』

バラードは大昔に『結晶世界』を読んだきりだったが、このところSFと主流文学の境界を渉猟していて、避けて通れないことをあらためて認識したので、割と最近映画化されて有名な本書から手をつけてみた。 40階建の高層アパートメントを舞台にした内戦状態を描いたディストピア小説だとばかり思いこん...

山下範久編著『教養としての 世界史の学び方』

具体的な世界史上の出来事ではなく、世界史を記述する歴史学という学問がどういうもので、その記述としての世界史は現状どうあるべきであることになっているかということについてのメタな本。もともと歴史学を学ぼうとする学生の教科書として企画されたというのも頷ける。 第I部は『私たちにとっての「...

グレッグ・イーガン(山岸真編訳)『ビット・プレイヤー』

イーガンの日本で編まれた6冊目の短編集。とはいえ、今回は短編というには少し長めの作品ばかりだ。 『七色覚』は遺伝的な障害を逆手に色覚を人為的に拡張した人々のたどるその後の人生。ちょうど色覚に関する解説記事を読んでいたので、理解しやすかった。苦い結末になりそうでならなかったのはイーガ...

ホエイ『喫茶ティファニー』

まったく予備知識なしに見たので地方の、時代から取り残された喫茶店の話かと思ったら、舞台はどうやら川崎。マルチの勧誘シーンがでてきて一瞬今回はそっちの話かと思わせるが、実は日本に昔からはびこってかえって最近また復活してさえいる民族差別がテーマなのだった。川崎臨海部あたりの在日の人た...

山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品集』

最近文庫で新刊がでて、山尾悠子という名前を初めてきいたのだが、読むならまず初期作品集と銘打ったこちらだろうと大きな本屋にいって入手した。 分類すれば幻想小説なんだけど、まさか日本語圏にここまで幻想世界の構築力にあふれた書き手がいるとは思わなかった。しかもそれが硬質で語彙力豊かな文体...

『チェコSF短編小説集』(ヤロスラフ・オルシャJr編、平野清編訳)

20世紀初めから終わりまでのチェコのSF短編小説を集めた本。収録作は11篇。ロボットという呼称を生み出した巨匠チャペックの作品も含まれているが、そのほかは初めてきく名前だ。編集の都合だろうか、数ページ程度の掌編といったような作品も少なからずあるので、チェコのSFの概況を把握するに...

シスカンパニー『LIFE LIFE LIFE 〜人生の3つのバージョン〜

なんと2ヶ月ぶりの観劇。コクーンの舞台と座席の配置が大幅に変えられて、舞台が真ん中でその周囲に座席がとりまくように配置される、今はなき青山円形劇場のようになっていた。 宇宙物理学者のアンリとその妻の元弁護士のキャリアウーマン、ソニアが夜子どもを寝かしつけようとしていると、明日来るは...