阿佐ヶ谷スパイダース『桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡〜』

四代目鶴屋南北の歌舞伎『桜姫東文章』が原作であることはそのストーリーも含めて見終わった後知った。 そうしてみると舞台をみてあっけにとられた物語展開のうちそれなりの部分が原作のお手柄だということがわかった。しかし、舞台と原作はまったく別物だ。年だが江戸から昭和の戦争前後に移しかえられ...

『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』(岸本佐知子訳)

この本を紹介する方法で、すぐに思いつくのは、作者はこういう人で、こういう人生を送って、それと作品にはこんな関係があるんですという、ライ麦畑のホーラン言うところの《デーヴィッド・カパーフィールド》式のやり方だ。この作者の場合、このやり方で書くべきことはとても多いし、たぶんそれだけ読...

『ホテル』 by ギョーム・アポリネール

アポリネールの詩だが、プーランクの歌曲として知っている。とても短い。 この部屋は鳥かごの形をしている 太陽の腕が窓を通り抜けてくる でも私はたばこをくゆらせて幻影をつくっていたい 日光でたばこに火をつける 仕事をしたくない - たばこを吸っていたい...

ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』

『サピエンス全史』は現生人類の過去についての本だったが、こちらは未来がテーマだ。最初のうち、同じ材料の残り物を使っているように感じたが、できあがった料理はまったく別物だった。 現生人類ホモ・サピエンスがほかの人類や動物たちに打ち勝って覇権を確立したのは、多数で協力することができたか...

岡崎藝術座『バルパライソの長い坂をくだる話』

全編アルゼンチン出身(1人はブラジル。セリフが少なかったのはスペイン語が母語ではないせいかもしれない)の俳優たちのスペイン語による公演で英語と日本語の字幕がついた。 父の遺骨を海に散骨に来た息子と母。母は押し黙り、息子が語りかける言葉は、今ここから離れ時空を飛び回る。パラグアイの皆...

アンナ・カヴァン(山田和子訳)『アサイラム・ピース』

長編『氷』に続いて二冊目のアンナ・カヴァン。こちらはキャリアの初期に書かれた短編集だ。 短編集というとおもちゃ箱みたいに多様な作品が含まれていることを期待してしまうが、これは一色といっていいだろう。それも極度に陰鬱な色合いだ。表題作の『アサイラム・ピース』は、精神を病んだ患者のため...

加藤陽子『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』

読み始める前は全く意識してなかったが、もうすぐ終戦記念日。いいタイミングで読むことができた。 『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』と同じく中高校生に対して行った講義をまとめた本。『それでも』は、明治維新以来日本が関わった4つの戦争について、その意思決定を取り上げた本だが、今回はそ...

五反田団『偉大なる生活の冒険』

2008年の再演らしいけど、みた記憶も記録もないので、たまたま見逃してしまったのだろう。 仕事もお金もなく元カノの家に居候し続けている男が主人公。やることといえば、拾ったファミコンで古いRPGをプレイすることだけだ。過去と現在の交錯、無為に流れてゆく時間。五反田団の特徴的な要素が詰...

ダフネ・デュ・モーリア(務台夏子訳)『デュ・モーリア傑作集 人形』

ダフネ・デュ・モーリアはヒッチコック映画の『レベッカ』や『鳥』の原作で知られるイギリスの小説家。1907年に生まれて1989年に亡くなっている。これは比較的初期の作品を集めた短編集。 映画化された作品からはサスペンスフルな印象を受けるが、この本に収録されているのは、男女の心のすれ違...

M&Oplaysプロデュース『二度目の夏』

これまでベテラン俳優を使って数々のメロドラマを作りあげてきた岩松了が今回は20代主体の若手キャストで挑む。 染色会社の二代目社長の田宮慎一郎は結婚して一年の妻いずみや従業員たちと別荘に避暑に来ていたが、急な仕事が入り、いずみの相手をさせるため後輩の北島を呼ぶ。周囲の噂になる二人に対...