青年団リンク キュイ『非常に様々な健康の事情』

三篇から構成される短編集。 冒頭の『非常に様々な健康の事情』は現時点での最新作。3人の元同級生の女性がカフェでかわるがわるそれぞれの不健康な状況について語り合う。彼氏のDV、上司のハラスメント、親族の迷惑な干渉など一見バラバラなことについて語っているようにみえるが・・・・・・。綾門...

青年団リンクキュイ『あなたたちを凍結させるための呪詛』

上演時間40分だけど短いという感じがまったくない凝縮された時間だった。 2022年2月、正社員として働く独身女性のモノローグ。注意してたのにコロナに罹患するが回復する。そのあとの物語。たぶんコロナ以前はかろうじて耐えられた、日々の理不尽が耐えがたくなり、呪詛をはく。それは「あなたた...

青年団リンク キュイ『プライベート』

『これは演劇ではない』というフェスティバルの参加作だが、今年最初に見た演劇と言っていいのだろうか。 あたかもドキュメンタリー的に、舞台で稽古の日の様子を断片的に再現する。奇妙に自己言及的だが、これが不思議におもしろいのだ。過去の記憶を想起する行為の中にすでに詩情が含まれているのかも...

お布団の哲学『対話篇』

プラトン『対話篇』の中の一篇『クリトン』が原作。誹謗中傷で死刑に処されようとしているソクラテスを脱走させるために友人のクリトンがやってくるが、ソクラテスは悪法ともいえども法という論理を振りかざして、それを拒絶するという有名な話だ。この舞台では、それが漫才の話に移しかえられている。...

お布団の哲学『想像を絶する』

二演目のダブルヘッダーの一本目。ひとり芝居だ。 二部構成。第一部では男性、第二部では女性が語り手で、本来二人の役者で上縁するところをあえて女性ひとりでやっている。しかも戯曲の言葉を細かく区切って暫定的な意味を浮上させつつ、次の言葉をつなげることによりそれを裏切っていくという興味深い...

青年団リンク キュイ『きれいごと、なきごと、ねごと、』

まったく予備知識なしにみたが、女子高生三姉妹の物語で、しかも演じるのが男性で、かつ4人で役を回していくというアクロバティックな舞台。男性役は当然女性が演じている。 長女愛雨はクールで落ち着いた性格、次女白雨は、溺愛されて育ち異性にモテる三女翠雨にただならぬ嫉妬を抱き、その三女はメン...

青年団リンク キュイ『前世でも来世でも君は僕のことが嫌』

キュイはこれまで短編を集めたやつしか観てこなかったので心構えとしては半分くらいアートをみにいくような感じがあったのだけど、今回は初の長編で、演劇をみているという感じになった。 簡単にいってしまえばループもの。ただし、ループするのは4つの別々の人物設定・シチュエーションの1日でそのど...

青年団リンク キュイ『TTTTT』

綾門優季の3つの短編戯曲を23人の演出家が演出するというオムニバス企画。近未来の東京という都市をテーマにした話という共通点がある。 『人柱が炎上』は国会周辺のデモの最中起きたテロ事件を周辺の複数の視点から描いたひとり芝居。一般のデモ参加者、警官、野次馬、被害者の元同級生など男女問わ...

青年団リンク キュイ『不眠普及』

キュイダブルヘッダー2作目。もともとひとり芝居として書かれた戯曲を3人の俳優に割り振ったそうだ。あるときからまったく眠れなくなってしまった女性。実はそれはセックスで感染する性病だった。それに気づいた同僚によって彼女は不眠を社会に広げていくためのキャリアとして利用される……。という...

青年団リンク キュイ『止まらない子供たちが轢かれてゆく』

キュイダブルヘッダーの1本目。まったく前提知識なしにはじめてのキュイだったのだが思ったよりずっと楽しめた。若い世代のつくる演劇は情感ドリブンのものが多い気がしていたけど、綾門優季の戯曲は言葉の放つパワーが生半可でない。そのパワーの強烈さ故に上滑りしかねない戯曲を適切にサンプリング...