玄田有史『仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在』

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

最近の若いやつらは我慢が足りない。フリーターに甘んじていて、正社員になったとしてもすぐやめる。がつんと鍛え直さなきゃだめだ。なんてことを酒場でくだを巻いているおやじだけでなくマスコミや行政までもが声高にとなえている。でもそれは、長引く不況の中、中高年の雇用を優先したせいで、そもそも若者の求人が少なく、仮に就職できたとしても希望外で条件が悪いところだからではないか。ということを統計データを使って着実に実証していく。

今日本で働いている人の中で自分の仕事に対して何らかの不安を抱えていない人はほとんどいないだろう。フリーター問題もそのひとつだが、曖昧な不安にとり囲まれた「仕事」をめぐる状況を、統計データを使って見通しをよくしようというのが、本書の趣旨だ。

現状分析だけではなく、いくつか働く人たちへの提言のようなものもある。ひとつは、「頑張る」とか「頑張れ」という言葉を使わないということ。そうではなく、ある目的の実現のため具体的に○○をするという考え方をした方がいい。もうひとつはたまにだけ会うような弱く広い友達のつながり(ウィーク・タイズ)を作ること。そういうところから思いがけないヒントやアドバイスがもらえることが多い。

「仕事」が嫌いなぼくではあるが、それでもこの本を読むと、かすかなファイトのようなものが感じられて、それは押しつけがましいものでは決してなく、著者が自分の仕事に対して抱いている誇りと誠実さが、こちらに伝わってくるのだと思う。ふだん読まないタイプの本だが、いい本だと思う。

★★★