レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『水底の女』ebook

水底の女

春樹マーロウもこれにて完結。奇しくもぼくが最初に読んだチャンドラー作品だ。あとがきで訳者曰く、基礎構造に無理のあるチャンドラーらしくない作品ということだが、ぼくは、プロットが発散しない分集中できで、この作品がすごく好きだということを再確認した。『ロング・グッドバイ』の次に好きかもしれない。

厳密性を重んじる学者みたいに慎重でもってまわったしゃべり方をするマーロウが魅力的だ。老保安官(正確には違うけど、わかりやすくそう呼んでおく)ジム・バットンもとてもチャーミングで、口調が騎士団長を思い出させる。このあたり村上春樹ならではの訳だったと思う。

『水底の女』という邦題についてあとがきに絶対書かれているだろうと思ったがまったく触れられてなかった。原題は “The Lady in The Lake”なので直訳するなら『湖中の女』なのだ。清水俊二訳でもそうなっていたし、なぜ今回タイトルを変えたのか理由が知りたい。