ざるそばのわさび

Q

先日、ざるそばのつゆにわさびを溶いたらおこられました。「お前はそばの食い方をしらん」と。

「セブンイレブンの小割りそばになにを大げさなこと言ってんだ」と思ったのと、「こいつ美味しんぼでも読んだんだな。刺身を食べるときにわさびを醤油に溶いた富井副部長が山岡さんに怒られた話が昔あったな」と思ったので無視しました。よく考えれば理由を聞いておけばよかったと思います。

というわけで、なんでつゆにわさびを入れてしまってはいけないのでしょうか? また、わさびはどうやってつかえばいいのでしょうか?教えてください。

(なすさんからの質問)

A

サライ編集部著『そば通の本』(小学館文庫)という本の中には、特に、わさびをつゆにといてはいけないという記述はありませんでした。ただ、今回の場合、わさびをつゆにといてはいけないという理由で、「そばの食い方をしらん」といわれたかどうかはわかりません。ほかにいくつか考えられる理由を挙げます。

わさびがよくない
「蕎麦の薬味は、通常おろし大根、刻み葱、蕃椒(ばんしょう)、または七味唐辛子を供し、笊(ざる)と種物にはおろし山葵(わさび)を供する」と書いてあります。何となくわさびを使うのは例外のような表現です。同じ章の後の方に、大根、特に辛味大根と呼ばれる、小さくて辛い品種をおろして使うという記述があるので、そばつゆに一番合う薬味は大根なのかもしれません。昔は、もりそばのつゆには七味をいれたそうです。まあ、これは、わさびが高価だったので、安価なもりそばにはつかなかったということでしょうけど。
つゆを使うこと自体が悪い
上記の本に「本当の蕎麦好きは純粋な蕎麦の味を味わいたくて、蕎麦つゆでなく水ですする」と書いてありました。

そばにばかり気をとられてそばつゆを見落としていました。わさびを入れてしまえば、そばつゆの味は大きく変わってしまいます。つまり、そばつゆ本来の味を味わいたいのならば、わさびをといてはいけないのです。『そば通の本』にも、「汁の味を試みるには、薬味を入れないうちに、一箸蕎麦につけて食ってみることだ。いきなり、薬味を入れてしまっては、本当の味はわからなくなる」と書かれています。