『ただ君を愛していたい』 by ポール・エリュアール

連日のポール・エリュアール。今日はプーランクが歌曲にしている詩を訳してみた。短くてつかみどころがない曲だけど、詩がいい。単純な恋の歌であるようでありながらこの世界の謎に向き合っているような奥深さを感じる。

最初のスタンザの2行目、3行目はあからさまに性的な暗喩。2連目で「君」のほかに「世界」、「昼と夜」が登場していきなりの広がりに驚くけど、最後にまた繰り返されたときには「世界」も「昼と夜」も「君」と一体化したものとして表現される。

後半の文法的な構造が若干複雑なので正確さを優先して訳した。

ただ君を愛していたい
嵐は谷間を満たし
一匹の魚が川を満たす

ぼくの孤独に釣り合うように君を作った
世界はまるごと世界自身が隠れるため
昼と夜は互いに理解し合うために作られた

君の目の中に見えるものを
ぼくの思いでいっぱいにするために
それは君と
君に似せた世界と

そして君のまぶたが切りかえる昼と夜についての思い

Youtubeにいい演奏がなかったので、Apple Musicへのリンクを貼っておきます。

Sophie Karthäuser & Eugene Asti “Tel jour telle nuit, FP 86: 7. Je n’ai envie que de t’aimer”