円城塔『エピローグ』ebook

エピローグ (ハヤカワ文庫JA)

同時刊行された『プロローグ』と『エピローグ』、ふつうなら『プロローグ』を先に読むが、円城塔作品なら逆だろう、とこっちから読むことにした。

直前に読んでいたのがイーガン『シルトの梯子』なので人間がソフトウェア化された世界の話というのが共通していた。もうひとつ共通しているのが難解さだ。ただし、イーガンの難解さはあくまでSF的な難解さだが、こちらは文学的というかメタ文学的な難解さだ。イーガンはがんばれば多少は理解できるかもしれないが、こちらは同じような意味で理解するのは原理的に不可能なので、逆に気楽ではある。

といっても序盤は難解ではなかった。人類はOTCという謎の存在に侵略され、現実宇宙からコンピュータでシミュレートされた仮想宇宙へ、さらにその仮想宇宙へと退却(「退転」とよばれる)を余儀なくされているという世界観。少女と少年の奇妙ななれそめを描くプロローグ(そう、『エピローグ』もプロローグからはじまるのだ)のあと、OTCと戦って残骸を回収する兵士である朝戸と彼をサポートする異形のエージェントアラクネのパートと、この世界で発生する連続事件を捜査する刑事クラヒトのパートが交互に描かれる。

あれ、円城塔も年齢を重ねて浅いメタで理解可能な作品を書くようになったのかと、たじろぎもしたが、序盤のこの秩序はあとかたもなく破壊される。すがすがしいくらいに。そしてエピローグ(そう、『エピローグ』もエピローグで終わるのだ)へと流れこむ……。