『出会いと別れ』 by ロバート・フロスト

“summer” というキーワードで検索してヒットした作品。 ぼくは壁に沿って丘をくだっていた 門の向こうを見ようとのびをして ふりかえったときあなたをはじめて見た あなたは丘をのぼっていた。ぼくたちは出会った。でもその日 ぼくたちがしたのは夏の砂の中で大小の 足跡を混ぜ合わせただけだった。まるで 二人以下で...

希望は羽のあるいきもの by エミリー・ディキンソン

久々に翻訳。 希望は羽のあるいきもの こころの止まり木にとまり 言葉のない歌を歌い 歌声がやむことはない 甘い声は強風の中でもきこえる 嵐は苛酷なのだろう ぬくもりをためこんだ 小鳥が当惑するくらい わたしはいちばん寒い国でその声をきいた 見知らぬ海の上でもきいた どんな窮地におちいっても 希望はわたし...

『昨日』 by ルイーズ・ララン

フォーレ、ドビュッシー、プーランクなどフランス歌曲ファンなので、ここらでなにかひとつ歌詞を訳してみようと物色して、最初に試したのが Paul Verlaine の 《Il pleure dans mon cœur》。これは理由なき喪失感をうたったとても切実でいい詩なんだけど、有名すぎてさんざん訳されているし、同じ内容の言い換えが多いの...

『小石はなんて幸せなんだろう』 by エミリー・ディキンソン

ぼくも小石になりたい! 原文: http://www.bartleby.com/113/2033.html 小石はなんて幸せなんだろう 道をひとりでぶらついて キャリアなんて気にしない 緊急事態も怖れずに たった今世界がまとう 素朴な茶色のコートが一張羅 協調するかひとりで輝くか 思うがままの太陽みたいで 飾らない単純さで 絶対的な神意を充たす...

『草刈り』 by ロバート・フロスト

思ってた以上に前向きな詩だった。訳すことでなにか癒されたような気もする。よし、明日こそがんばって草を刈ろう! ひとつをのぞいて森の傍らでは物音はしなかった わたしの長い大鎌が地面に囁きかけていたのだ 何を囁いていたのかって?わたし自身もわからない たぶん、日向の暑さについてぼそぼそ 音がし...

『その朝の朝食』 by ジャック・プレヴェール

彼はコーヒーを カップに入れた 彼はミルクを コーヒーカップに入れた 彼は砂糖を カフェオレの中に入れた 小さなスプーンで 彼はかき混ぜた 彼はカフェオレを飲んだ そして彼はカップを戻す わたしに話しかけずに 彼はタバコに 火をつけた 彼は煙で 輪を作った 彼は灰を 灰皿に入れた わたしに話しかけずに わたしを見ず...

『ひ(は』 by e.e. カミングス

e.e cummings “95 poems” より “l(a” 。ちょっとむりして訳してみた。う〜ん、どうかな? ひ(は っぱ がひ とつ おち る) と り ぼっち...

『ユリは薔薇をもっている』 by e.e. カミングス

e.e. cummings “lily has a rose” ユリは薔薇をもっている (わたしにはない) 「泣かないで親愛なるスミレさん わたしのをあげるから」 「ああ、どう、どう、どういう顔で それをつければいいというの? それをあなたにくれたのは 一番背の高い男の子だというのに」 「二回キスさせてあげれば 彼はべつのをくれるわ それに彼のお兄さ...

『50男の言ったこと』 by ロバート・フロスト

今年の最後に、Robert Frost の “What Fifty Said” を訳してみた。まあ、遠からずこの年齢になるわけで。いつまでも学ぶ姿勢は忘れたくないものだ。 若いころ、教師は老人たちだった。 火から遠ざかり、冷えて固まるのを待っていた 鋳造中の金属みたいにぼこぼこになった わたしは過去を学ぶために老人たちのもとへ通っ...

『カリフォルニアのスーパーマーケット』 by アレン・ギンズバーグ

今度はアレン・ギンズバーグの有名な詩を訳してみる。スーパーマーケットに19世紀の大詩人ウォルト・ホイットマンがあらわれれるという妄想がたまらない。ギンズバーグとホイットマンには詩人ということの他にゲイ(バイセクシャル)という共通点があったようだ。巷の訳ではそこを無視しているものが...

『地下鉄の駅で』 by エズラ・バウンド

エズラ・パウンドの俳句のように短い詩、 “In a Station of the Metro”. ひとごみの中にあらわれたおもかげ しめったくろい枝に咲く花びら...

『ぼくは想うだろう 人生なんて』 by e.e. カミングス

Robert Frost ばかりだと渇きすぎているので、トーンを変えて e. e. cummings “i shall imagine life”。 ぼくは想うだろう 人生なんて どうせ死ぬなら意味がないと もし 薔薇が自分たちの美が永遠じゃないことに 文句をいうならば(そのときは) でもたとえ人類が どんな雑草も 薔薇と同じくらい美しいとおもいこんだとしても...

『誰もいない場所』 by ロバート・フロスト

同じ Robert Frost の “Deserted Places” を訳してみた。 雪は降り、夜も降りてくる、速く、あっという間に 私がじっと見ていた草原は消え失せた 地面は雪に滑らかに覆われて 草や刈り株がふたつみっつ残るだけになった そこはまわりの森の一部だった 動物たちはみな巣で丸まっている 私は上の空で気づかなかった 孤独が私を包んでいた 実...

『夜のことなら』 by ロバート・フロスト

Robert Frost の “Acquainted with the Night”。最近夜に歩くことが続いているぼくのための詩だと思い込んで、池袋のスタバで即興的に twitter で訳してみたが、あまりに完成度が低かったので、あらためて訳しなおした。ここに公開する。 私は夜のことならなんでも知っている 雨の中歩き出して雨の中戻ってきた いちばん...

子供時代の唄

ヴィム・ヴェンダーズの『ベルリン天使の詩』より。 子供が子供だったころ 腕をぶらぶらさせて歩いた せせらぎが川になったらいいなと思った 川が滝に 水たまりが海に 子供が子供だったころ 自分が子供だと知らず すべてに魂があり すべての魂はひとつだった 子供が子供だったころ 好き嫌いもなく 癖もなかった 足を...

I have lost touch with the world

ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』の最後のエピソード「シャンパン」で、くたびれた二人の男ビルとテイラーがまずいコーヒーを飲みながら、武器庫の片隅で休憩していると、かすかにマーラーの歌曲が聞こえてくる。それは彼らの会話の中から生まれた幻聴なのだが、建物の中をいっぱいに満...

The Road Not Taken by ロバート・フロスト

黄色い森の中 道が二つにわかれていた 残念だが一人旅、どちらかを選ばなきゃいけない 長い間たちつくして 片方をできるだけ遠く見おろした したばえの中で曲がるところまで それでもう一方を選んだ ほとんど平らで、印象がよかった 草深く人に踏み荒らされてなかったからだ とはいえ踏み荒らされ方は五十歩百歩...